トヨタ セラに込められたこだわり 本当は色モノじゃない!! 【偉大な生産終了車】

トヨタ セラに込められたこだわり 本当は色モノじゃない!! 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ セラ(1990-1994)をご紹介します。

文:伊達軍曹/写真:ベストカー


■ガルウイング採用のスーパーカーを160万円で市販化

 バブル景気真っ只中のトヨタが開発した、当時の大衆小型車「スターレット」をベースとするガルウイング採用モデル。それが、今となっては「時代の徒花(あだばな)」と言われることも多いトヨタ セラです。

ガルウィングはもちろんのこと、広大なガラス面(車体の上半分ほぼすべてをガラスが占めた)を持つキャノピー感覚の運転席も斬新だった

 セラの原型であるコンセプトカー「AXV-II」が世間に初めて公開されたのは1987年の第27回東京モーターショー。

 AXV-IIはまるで航空機のキャノピー(風防)のような全面ガラスの「グラッシーキャビン」を身にまといつつ、今までにないガルウイングドア(正確には斜め前方に開くバタフライドア)を採用していました。

1987年の東京モーターショーに出展された「AXV-Ⅱa」。Be-1やパオと同じ「パイクカー」の流れを汲むモデルとされた
1987年の東京モーターショーに出展された「AXV-Ⅱa」。Be-1やパオと同じ「パイクカー」の流れを汲むモデルとされた

 AXV-IIはモーターショーのためにだけに作られたお手軽コンセプトカーではありません。

 当時からトヨタが不得手としていた若年層ユーザーを獲得するため、1983年に社内に設置された「ヤングプロジェクト」が長い歳月をかけて真剣に開発したモデルだったのです。

 そして来場者やプレスから大好評となったAXV-IIは社内上層部からの評価も高く、「一刻も早く市販化を!」ということになりました。

 しかし前代未聞の「グラッシーキャビン+バタフライドア」の小型量産車を、十分な安全性等を確保しながら作るのは容易ではありません。

 結局、市販バージョンである「セラ」は2年後の1989年、第28回東京モーターショーで披露され、その約半年後の1990年3月に発売となりました。

ガルウィングのドアはダンパーを使っているため、開閉にそこまで苦はなかった

 車台的なベースは4代目スターレットで、エンジンは「110ps」というホドホドの最高出力を発揮する1.5L自然吸気4気筒。トランスミッションは5MTまたは4速ATです。

 しかしそういったスペックより、セラの最大の特徴は「グラッシーキャビン+バタフライドア」でしょう。人それぞれの好みはさておき、量産車としては初の試みとなったこのパッケージングは当時、大きな話題となったものです。

 このように気合を入れて開発および市販されたAXV-II/セラですが、初年度こそ9665台を販売したものの、翌1991年にはいきなり3737台と大幅減少。

 以降は1200台ちょっとだった1992年を経て、「年間数百台レベル」に減ってしまいました。

 神奈川県相模原市の工場で1995年7月に最後の一台が完成した時点でセラは生産終了に。販売最終年となった1997年の新規登録台数は「8台」でした。

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