米国フロリダ州で発生した高級車窃盗事件が、自動車業界に衝撃を与えている。総額50万ドル(約7500万円)相当の2台の高級車が、最新のテクノロジーを悪用した巧妙な手口で盗まれたというものだ。この事件は、デジタル時代におけるセキュリティの脆弱性を浮き彫りにし、業界全体に警鐘を鳴らしている。
文:古賀貴司(自動車王国) 写真:ベストカー編集部
■まさかの方法で盗まれた2台の超高級車
今回盗難されたのは、メルセデス・ベンツGLS600マイバッハとロールスロイス カリナンの2台だ。
CANインベーダー、リレーアタック、コードグラバー、“ゲームボーイ”など、盗難防止技術の進化とともに盗難の手口も進化を遂げているが、陸送ドライバーを騙すという新しい手口が用いられたのは斬新だった。
被害にあったのはフロリダ州サウス・パームビーチに本社を構える、ディーラーズ・チョイス・オート・トランスポート社。同社では陸送ドライバーがアクセスするポータルサイトにて陸送車両、ピックアップ場所、陸送場所などを確認できるようになっているそうだ。
犯人は陸送会社のオンラインシステムにハッキングし、陸送先を変更。挙句の果てに犯人は受取人を装い陸送ドライバーに電話もしており“本人”しか知り得ない情報を語っていた、というから信じてしまうのも無理はない。
まさか騙されているとは思わっていない陸送ドライバーは無事(?)、犯人に車両を引き渡してしまった。
■犯行後の犯人からは大胆なメッセージも
その後、陸送会社のオーナーが「ふざけるな!」とショートメッセージを送ったところ、なんと犯人は律儀に返信してきた。
「カリナンを盗んだやつからも、同じメッセージが来たよ。無料のGLS600マイバッハ、ありがとね。今頃、ドバイかヨーロッパのどこかだよ」というショートメッセージに加えて、破壊された車載GPSの写真が送られてきたという。
なお、カリナンはリミテッド・スペック・オートモーティブというディーラーが受け取るはずだったが、同様の手口で盗まれたそうだ。
受取人を装って車両を受け取る、という行為は一般的な自動車窃盗ではなく「不正アクセス」と「詐欺」と呼ぶべきなのかもしれない。
■報奨金が提示されるも犯人特定はまだ
ディーラーズ・チョイス・オート・トランスポート社のFacebookページを見てみると5月に興味深い投稿がなされていた。
今回の事件に関係している話か否かは不明だが、要約すると
「ドライバーが犯罪集団と結託して自動車窃盗に手を染めているケースがある」
「集荷に来るドライバーの運転免許証のコピーは取っておけ」
「自分の自動車保険ならびに陸送会社の運搬車両についての保険を事前に確認しておけ」
と、投稿していた。
現在、マイアミ市警察とマイアミ・デイド警察が連携して捜査を進めているが、犯人の特定には至っていない。
被害者側は各2万ドルの報奨金を提示し、情報提供を呼びかけている。
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