軽自動車で知られるスズキだが、新規開発のプラットフォームを与えて鳴り物入りで登場したにもかかわらず、1世代のみで姿を消してしまったモデルが存在する。それが2001年1月に登場したエリオだ。隠れた名車と呼ばれた所以を見ていこう!
文:小鮒康一/写真:スズキ
■日本のみならずグローバルで販売されていたエリオ
2001年1月に登場したエリオは、当初は5ドアハッチバックボディのみのラインナップとなっており、すでに1.3Lクラスのモデルとしてはスイフトが存在していたため、1.5Lエンジンを搭載してスイフトより上位の車種とされていた。
5ナンバーサイズのボディを持つ5ドアハッチバック車ではあるが、ミニバンの居住性とステーションワゴンの使い勝手、そしてセダンの走行性能を狙った欲張りなモデルとなっており、スタイルはギリギリ立体駐車場に入る1,550mmの全高と、ショートワゴンとも言える斬新なものとなっていたのも特徴だった。
インテリアも“安っぽいんじゃなくて、安いんです”と割り切っていた頃のものに比べると、限られた予算内で質感を高めようとしたものとなっており、輸出を見越して左右対象となったインストルメントパネルも意欲的なものとなっていた。
そして2001年11月にはリアに独立したトランクを備えて4ドアセダンとしたエリオセダンを追加。
こちらはハッチバックで特徴的だった大きなガーニッシュを持ったリアハッチではなく、シンプルなトランクを備えたことでハッチバックの未来感のデザインは薄まっていたが、一方で初代プリウスと混同されることもあったとか。
2003年1月には1.8Lエンジンを搭載するスポーティなモデルをハッチバック、セダンともに追加。
+300ccの余裕の走りを実現した1.8Lモデルには15インチアルミホイールやオートエアコン、本革巻ステアリング&シフトノブなどを装着したほか、専用エアロパーツをまとったことで全幅が1,720mmとなり、3ナンバー登録となっていた点もトピックとなっている。
1.5Lクラスの車両に1.8Lエンジンを搭載するなんてバランスが……と思う人もいたかもしれないが、実はエリオの北米向けモデルはデビュー当時から2Lエンジンが搭載されており、2004年モデルからはさらに大きな2.3Lエンジンに変更されているため、もともとシャシー性能には余裕があったというワケだ。
そんなエリオだが、2006年夏にハッチバックが先んじて終売となり、翌年夏にはセダンも販売が終了。実質的な後継車種であるSX4にバトンタッチする形で姿を消した。
ただパキスタンでは2014年まで、中国では2019年まで生産・販売が続けられており、日本ではややマイナーな存在であったもののビジネス的には決して失敗したとは言えない隠れた名車だったのだ。
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