1970年代は、オイルショックやマスキー法などで排出ガス規制が厳しくなり、クルマに環境性能や燃費性能が求められ始めた。更には安全機能(ABS)が初めて搭載されたのもこの頃である。そんな1970年代の後半に、世界一美しいクーペと評されるクルマ、BMWの初代6シリーズにあたる633CSi(E24)が誕生した。発売当時の記事が残っていたので、早速リバイバルしてみた。
この記事はベストカー1978年1月号(著者は杉江博愛氏)を転載し、再編集したものです。
【画像ギャラリー】当時の6シリーズ最高すぎでしょ!! 今なら買うのもありかな…(10枚)画像ギャラリー■これぞBMWと言わんばかりの一台!!
BMW 633CSiのスタイリングはイタリアンエキゾチックカーのように目をみはらせるものでもないし、またランチア・ガンマクーペのように流麗なラインを持っているわけでもない。
そこにあるのはチュートン系ゲルマンの完全さと機能的な美である。しかし、このクルマにはこのボディが一番似合っている。そしてそれはメルツェエデス450SLCの気の効かない鈍重さとも違う。
やはりBMWは陽気で明るいバイエルン生まれの高速車なのである。BMW 633CSiはそれまでトップモデルとして君臨していた3.3SCIの後継車である。ほぼ完全な4シータークーペで、ハイスピードツアラーなのである。
エンジンは3210cc。Lジェットロニク燃料噴射システムを持ち、200ps/5500rpm、29.0kgm/4400rpmを発生する6気筒OHCとなっている。
【画像ギャラリー】当時の6シリーズ最高すぎでしょ!! 今なら買うのもありかな…(10枚)画像ギャラリー■流石は世界一美しいクーペ!! 惚れ惚れしちゃうスタイリング
ミュンヘンのオリンピック競技場前に超近代的ビルを持つBMWの本社で633CSiを受けとり、すぐさまオーストリーのザルツブルグヘ向かう。
このコースは適度のコーナーと起伏に富みこういう高速車のテストにはうってつけなのである。ミュンヘンの市内を50~60で流しながらルーム内に目を転じるとそこにはすこぶる豪華な装備の数々がある。
シートは太うねのコーデュロイ調のファブリックでその形状、質感、硬度総てに文句のつけようがない。
特にそのポジションは完全で身長165cm、体重80kgというBサイズの私でもだまって座ればぴたりときまるアレである。
BMW 633CSiのコックピットは豪華をきわめる。モケット張りのバケットシートは適度な硬さでドライバーをホールドし、ダッシュボードは航空機のようにアンバー色に輝く。
ダッシュボードは清潔ともいえる完壁なもので、私はBMWのどの車に乗ってもダッシボードのデザインには感心する。
【画像ギャラリー】当時の6シリーズ最高すぎでしょ!! 今なら買うのもありかな…(10枚)画像ギャラリー■あまりにも速い!?!? 気になる走行性能は??
ようやく市内を抜け、いよいよアウトバーンヘ入る。ウィークデイのアウトバーンは比較的空いていて、いつもの通りVWビートルやゴルフ、オペル、フォードなどの大量販売のクルマ達。
そこに混じって、時おりメルツェデスのSクラスやSLがパッシングライトを点滅させて小型車をオーバーテークレーンから追い出してフッ飛んでいる。
どういうわけか最初、ボンヤリそんな風景をながめていた私は一台のメルツェデス280Eに抜かれて我に返り、シフトレバーをサードにたたき込んだ。クウー!!という低いモーターのうなりを残して633 CSiは急加速を始める。
160km/hを超えてもいっこうに加速は弱まらず200km/hヘ到達、スピードメーターは200km/hをビタッと指したままクルージングを始める。”速い”これが実感である。
しかも特筆すべきはそのスティアリングの安定感と乗り心地の適度の柔らかさである。160~170km/hで走れるコーナーが連続するところでようやくメルツェデスに追いつき抜くことに成功。
このささやかなバトルを勝って私は内閣大いに満足であった。こうなるともうこのまま走りきってしまおうと心に決め、連続するコーナーを次々と楽しむ。
私の運転技術では到底その限界を試すのは不可能なほどであり、なんとも素晴しいという以外の言葉が見当らない。633CSiを丸一日乗って、私はこの車に完全にイカレてしまった。
チョッとかなわぬ夢だがこの車を西ドイツで所有したいものだ。
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