ボルボ・グループは米国で2027年1月より適用開始される「EPA2027」の次期大型ディーゼル車排ガス規制に対応する新型エンジンを発表した。北米向けボルボ、およびマックの全モデルで利用可能になる。
EPA2027はNOx排出量の基準値が非常に厳しく、内燃エンジンで基準を達成できなければ電動化を強制するものになる可能性もあったが、これで北米の大型トラックメーカーはほぼ全て対応する見込みとなった。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Volvo Trucks North America・Mack Trucks
ボルボグループが「EPA2027」対応の新型エンジン
ボルボ・グループに属するボルボ・トラックス・ノース・アメリカ(VTNA)は2026年5月4日、米国の「EPA2027」規制に対応する新型エンジンを公開した。また、同グループのマックも同様にEPA2027への対応を発表した。
2027年はじめより適用が開始されるEPA2027は、米国環境保護庁(EPA)が定める自動車排出ガス規制で、とりわけ大型トラックに対する窒素酸化物(NOx)の基準値が非常に厳しく、現行規制の馬力・時当たり200mgから35mgへと大幅に強化される。これは日本のH28年/ポストポスト新長期規制のおよそ9分の1という厳格さである。
ここまで厳格な基準値が設定された背景としては、規制当局側に電動化を促す狙いがあったとみられ、事業者が求めるパフォーマンス、効率、信頼性を維持しつつ内燃機関で新規制に対応するのは、かつてなく難しい要求となっていた。
そもそも、ディーゼルエンジンのNOx排出量は効率とトレードオフの関係にあることが立証されている。燃焼効率を高める(燃費を向上する)には高い燃焼温度が必要だが、そうすると空気に含まれる窒素と酸素の反応が進みNOxが生成されるためだ。
NOx低減と燃費向上の両立はディーゼルエンジンにとっては難しい課題で、連邦レベルでの規制強化は、メーカーが対応できなければ電動化を強制するものになる可能性もあった。
これまでにダイムラー、インターナショナル、カミンズなどがEPA2027への対応を発表しており、ボルボグループ(VTNAとマック)も新型エンジンを発表したことで、北米市場では2027年以降も当面はディーゼルエンジンが貨物輸送の主役を担うことが確定したといえるだろう。
新型エンジンでNOxを80%削減
排気量13L級の新型エンジン(ボルボのD13型とマックのMP13型)は、NOx排出量を現行比で80%以上削減し、性能を損なうことなくクリーンな運用を支えるという。
現行型のD13型エンジンはボルボにとっては最も多く製造してきたエンジンプラットフォームで、新型エンジンにもそのノウハウを取り入れ、あらゆる用途に柔軟に対応した。長距離輸送などオン・ハイウェイ系トラックではNOxを低減しつつ燃費を維持し、ボケーショナル(特装)系トラックでは燃費も向上する。
馬力/トルクのオプションを拡大し、最大で540hpと1950lb-ft(約2640Nm)となる。回転数900rpmからピークトルクを発揮するほか、エンジンブレーキ性能を20%向上し、制動力は最大630hpに。坂道でのコントロールを容易とし、特に重量物の積載時や急勾配での走行性能が改善した。
さらに、R100燃料(再生可能ディーゼル100%燃料)やB20燃料(バイオディーゼルを20%混合した燃料)に対応しており、代替燃料の選択肢が拡大する中、事業者に柔軟性を提供する(マックによると、従来はB10燃料までの対応だった)。
新エンジンはEPA2027に対応するとともに、全米50州の排ガス規制に準拠した。規制対応は(電動化のような新技術の導入ではなく)10年以上にわたり商用利用されてきた既知の技術を基盤としており、耐久信頼性・整備性を確保して稼働率の向上に貢献する。
VTNAの全てのモデルで新型エンジンが利用可能になるそうで、規制がスタートする2027年1月1日までの移行をサポートするため、生産と供給網、ディーラー網とサービスインフラを平行して開発してきたという。
いっぽう、近年、ラインナップの刷新を進めているマックでも新型のMP13型エンジンが全モデルで利用可能になる。基本的にはボルボの新型D13エンジンと同じだが、出力特性などがマック向けにチューニングされている。新型エンジンにより、特にボケーショナル系の「グラナイト」は現行比で3%、新たに導入した「キーストーン」は従来モデル「ピナクル」比で6%の燃費向上を謳う。なお、マックは11L級エンジン(MP7型/MP8型)については生産を終了し、カミンズと共同開発のX10型に置き換えるという。
新型エンジンはいずれもAMT(自動化マニュアルトランスミッション)のボルボ「Iシフト」やマック「mドライブ」と組み合わされる。


