昨今、電動化によって激動の時代を迎えようとしている自動車業界。現在から2030年までの約5年間もの間に、各自動車メーカーはどうなっていくのだろうか? 今回は第1四半期連結決算のデータや販売状況をもとに、ここではトヨタの5年後を予測してみるとする。国内メーカー最高の研究開発費を投じ、マルチパスウェイ戦略を推進するトヨタの評価は!?
※本稿は2024年8月のものです
文:佃 義夫、国沢光宏、西村直人/写真:ベストカー編集部、トヨタ
初出:『ベストカー』2024年9月26日号
■現在の方針から見たトヨタの5年後の経営状況
王者トヨタに“綻び”が。クルマの量産に必要な「型式指定」の認証不正が、子会社の日野自動車、ダイハツ工業、そして本家筋の豊田自動織機と続いて、トヨタ自動車本体でも不正が追加判明したことで、国交省はトヨタへ組織の抜本的な改善を命じる「是正命令」を出す事態に至ってしまった。
この綻びを正すには、世界的な信頼性確保への自浄作用による再発防止へのガバナンス(企業統治)が必要になる。
だが、トヨタの業績は前期2023年度連結決算で日本企業として初の営業利益5兆円超えを確保したのに続き、2024年4〜6月の第1四半期連結決算でも営業利益1.3兆円と過去最高値を更新した。2030年代に向けて投資余力は充分だ。
豊田章男会長の「敵は炭素だ」との発言でも明確なマルチパスウェイ(全方位)戦略推進のなかでも、BEV戦略は2030年にBEV世界販売を350万台すると上方修正し、「BEVも本気」だと示した。
豊田章男氏が健在であれば、「院政」でも1強トヨタは続き、「トヨタ連合」の座は揺るがないと見る。
(佃 義夫 佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆)
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トヨタの戦略は私が考える「自動車業界の動き」と重なる。
現状で言えば「電気自動車の時代になる前の主役」のひとつであるハイブリッドを大半のモデルにラインナップしており、PHEV化も容易。遅くとも2027年には次期型BEVのプラットフォームと、安価で高性能のリン酸鉄リチウム電池を量販できる体制ができる。
そして政治や経済的な理由により電気自動車の普及が遅れた時に有効な「電気自動車ベースのPHEV」も開発している。電池は調達先に振り回されることのない自前。プランBも想定しており準備万端と言える。
トヨタ以外のメーカーはエンジン車の開発は凍結して電気自動車に注力する傾向。トヨタのみ2L直列4気筒ターボのハイパワーエンジンを間もなくローンチする。レクサスだけでなくGRにも搭載されると思う。
さらにCAFE(企業平均燃費)のよさを活かし、人気のSUVもさまざまなバリエーションを出してくる。新型車の8割が売れれば、もはや電気自動車の時代を迎える前はトヨタ車しか魅力的なクルマが見当たらなくなるかもしれません。
●期待値:100/100 BEVだけでなく、内燃機関の技術も磨き、大いに期待を感じる。
(国沢光宏)
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注目は2026年度以降にデビューするAER(全電気航続距離)1000kmを目指したBEV。全個体電池も2028年頃には実用化。
出光/エネオス/三菱重工と検討を進めるCN燃料への対応にも期待だ。新開発の内燃機関1.5Lと2.0Lも導入し、パワー&環境対応も万全だ。
(西村直人)
※CN燃料……カーボンニュートラル燃料。製品ライフサイクル全体においてCO2排出量を抑えられる
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