ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブ」。今回は新世代エンジン「Drive-E」2Lターボを搭載したボルボのSUVモデル「XC60 T5」の事前試乗記事をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2014年3月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:鈴木直也/写真:平野 学
■JC08モード燃費13.6km/Lをマーク、価格帯は499万~699万円
ボルボが“Drive-E”とネーミングされた新世代のパワートレーンを発表。それを搭載した第一弾モデルとして新しいXC60 T5が日本市場に導入された。事前試乗会が開かれたのでさっそくレポートしよう。
注目すべきは、年産わずか40万台強のメーカーであるボルボが自前で最先端の高効率ハイテク直噴ターボエンジンを新開発したことだ。
もちろん、ボルボが生き残ってゆくためにはクリーンで高効率なパワートレーンが不可欠ではあるが、それを提携になどに頼らず、自前でまかなうとは思わなかった。
ボア・ストロークからすべて新設計した2L DOHC16バルブ直4ターボは、最新の200barスプレイガイデッド直噴によって245ps/35.7kgmのパワー&トルクを発揮。
ヘッド直上にノズルを持つこの最新世代直噴システムは、高圧による噴霧粒の微細化や最大3回のマルチパルス噴射などによって、クリーンな排ガスと優れた燃費性能を実現している。
実際にも、新型XC60T5&はボルボ車として初のエコカー減税100%(免税)を達成。車重約1.8トンのSUVとしては大健闘のJC08モード燃費13.6km/Lをマークしている。
興味深いのは、この新パワートレーンの開発にデンソーとアイシンという日本のサプライヤーが重要な役割を担っていることだ。
直噴システムやそれを制御するECUはデンソーの手になるものだし、実燃費に大きく貢献する8速ATはアイシンAWからの供給。ともにボルボとは長いつきあいとはいえ、こういう最新のハイテクパワートレーンがトヨタではなく、ボルボによって日本にデビューするとはちょっと複雑な心境だ。
走りっぷりは文句なしに新鮮なサプライズがある。
前述のとおり、XC60はけっして軽量なクルマではないが、アクセルに対する元気のいいレスポンスはまるで車重が500kgほども軽くなったかのよう。
踏めばすぐグイッとくる静止からの加速はもちろん、80~100km/hあたりの追い越し加速では8速ATの歯切れのいいシフトダウンが快感で、まるでスポーツサルーンみたいにシャープなドライバビリティを披露してくれる。
ボルボはこの新パワートレーンの想定ライバルをBMWの2Lターボ搭載車としている。
同じSUVということで、X3(xDrive28iが馬力もトルクもぴったりの同スペック)と比較しても、XC60のほうがよりトルクフルだし、トップエンドでも互角以上に気持ちよく伸びる印象。ATの変速フィールについても、アイシンの8速ATはBMWのZF8速以上に“キレ”がいい。
価格的にも、X3(xDrive28i)が600万円超えなのに対し、XC60 T5は499万円から。
ボルボの持ち味は高度な安全性というのが定評だけれど、今度のDrive-Eパワートレーンでは“スポーティな走り”も大きな魅力のファクターになってきている。
それにしても、日本車が燃費効率アップに熱中するかたわら、欧州車が「燃費だけじゃなく走りも!」というアピールを強めている点は注目しなくちゃいけない。
やっぱりパワートレーンこそあらゆる意味で自動車の価値の中核になっているのだと思う。
それを再認識させてくれたのが、今回のボルボの新しい“Drive-E”でありました。

















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