発売が予告されていたアルピーヌ「A110S」がいよいよ2020年3月からデリバリーを開始。その試乗会が筑波サーキットで行われたので、鈴木利男氏に評価をお願いした。
A110Sは、標準車のA110からエンジン、サスペンションを強化したスポーツ仕様で、主な変更点は以下のとおり。
●1.8Lターボエンジンのブースト圧を上げて、最高出力を252psから292psに向上。最大トルク32.6kgmは変わらないが、その発生回転域を1420rpm広げ、より高回転域まで加速が続く設定にした。
●サスペンションはスプリング、アンチロールバーの剛性を約1.5倍強化。最低地上高を4mm低くして(全高届け値は標準車と同じ1250mm)、重心位置を最適化した。
●タイヤの銘柄は同じだが、幅を前後ともに10mm広げるとともに、よりグリップ力を発揮する専用コンパウンドを採用した。
●カーボンルーフを採用し、室内のステッチカラーを標準車のブルーからオレンジに変更。また、ブレーキキャリパーもオレンジに塗装されている。シートは標準車と同じで、トランスミッションも同じ7速DCT。
今回は標準車と同じ条件で乗り比べられるプログラムもあり、バッチリ比較できた。評価の達人、利男氏はどう感じたのか?
※本稿は2020年3月のものです
TEST&REPORT/鈴木利男
写真/奥隅圭之
初出:『ベストカー』 2020年4月10日号
【画像ギャラリー】スポーツ性能をアップさせた「S」の全貌を一挙紹介
■鈴木利男氏のインプレッション
エンジンは、低中速トルクは標準車と同じような感覚ですが、回転が上がった時のパワー感が違います。標準車よりも全体的にパワーが盛られた感じで、回転もスムーズ。サーキットはもちろんですが、箱根ターンパイクのような長く続く上り坂などでも違いは明確にわかるでしょうね。
ハンドリングはムダな動きが減って、よりしっかりしています。コーナーでのロール量も減っているし、ステアリングを切り足した時の応答性も向上。スラロームでは標準車だとだんだん動きが大きくなるんですが、そういう感覚もなかったですね。
ただ、旋回速度が上がるぶんタイヤにかかる荷重も増えるので、標準車よりもコーナリング中にタイヤがたわむ感覚があります。サスペンションを強化してストロークが減ったぶん、タイヤの上下のたわみを感じやすい。もう少しサイドの剛性が高いタイヤにするとタイムは上がると思いますが、当然乗り心地は悪くなりますから、どこにポイントを置くかなんでしょう。
また、前後のバランスがよくなっているので、標準車よりもオーバーステア傾向が減っています。滑り出してもスムーズでコントロールしやすいのは標準車と同じで、凄く乗りやすいクルマですね。
サーキットでスポーツ走行を楽しみたいなら「S」がいいでしょうが、たまに峠道でスポーツドライブを楽しむくらいというなら標準車で充分ですね。標準車もとても軽快で楽しいクルマですからね。
メーカーが狙ったとおりの性能が出ているようだ。A110Sの価格は899万円で、A110の最も安いグレードから約95万円高。「S」専用色のグリトネールマットは40万円高で受注生産となる。
コメント
コメントの使い方