トヨタ車といえば、「よくも悪くもソツのない仕上がり」。そんなイメージを覆す1台の車が2018年春、発売されようとしている。
1.8Lスーパーチャージャーエンジンで武装したヴィッツGRMNの走りには、鮮烈な印象を残したホンダ インテグラタイプRに通ずる痛快さがあった。
そう、その走りは“トヨタっぽくない”のだ!! ちなみに予想価格は350万〜400万円。限定200〜300台規模となる見込みだ。
文:鈴木直也/写真:小宮岩男
ベストカー2017年10月26日号
トヨタ車のイメージを打破するヴィッツGRMNの走り
豊田章男さんが社長に就任した2009年から、ずーっと言い続けているのが「もっといいクルマをつくろう!」というテーゼ。
もちろん、ぼくらもこの言葉をさんざん聞かされてきたわけだが、たしかに車はどんどんよくなってきているものの、その内容はトヨタらしくソツのない仕上がり、というイメージ。
車好きのハートを揺さぶるような車にはまだ出会えていなかった。そう、今回ヴィッツGRMNに試乗するまでは……。
あんまり感動したのでもったいぶった書き出しになったけど、先日袖ヶ浦フォレストで試乗したヴィッツGRMNは、そのくらい乗って面白いし完成度も秀逸。21世紀のトヨタ車としては、間違いなくファン・トゥ・ドライブ度ベスト! そう評価したいすばらしい車だったのだ。
スペック以上に凄い“数字では表わせない部分”の作り込みと味付け
GRブランドは、上からGRMN、GR、GRスポーツという3つのラインで構成されるが、ヴィッツGRMNはそのなかの“目玉”といえる入魂の本格スポーツ。GRブランド立ち上げの初期評価はこの車で決まるわけだから、その気合の入り方たるや半端ではない。
ベース車は日本で売っていない3ドアを選び、溶接打点の追加や補強ブレースなどで徹底した車体剛性アップを実施。エンジンは1.8Lの2ZZ-GEにイートン製スーパーチャージャーを装備して210ps以上を発生。これに6速MTが組み合わされる。
スペック的には“万全”といえる手当てをしてきたわけだから、走りが悪かろうはずはないのだが、ぼくが感動したのは数字で表わせない部分が恐ろしく入念に、しかもセンスよく作り込まれているということだ。
エンジンのトルク特性やアクセルに対する反応の忠実さをはじめ、いかにもきちんと吟味されていることがうかがわれるシフトタッチやクラッチのミートフィール。
そして、初期舵角が穏やかなのにえらく深いところまでしたたかに追随する操舵レスポンスと、それを受け止めてビシッとバネ上を安定させるサスペンションの味付け……。
失礼な言い方で申し訳ないが、たかがヴィッツのホットバージョンをここまで徹底して乗り味にこだわってキッチリ仕上げてくるとは予想外。ドライバーの思いどおりに車が動いてくれる精密なコントロール性能こそ、ファン・トゥ・ドライブの真髄。ちょうどいいサイズの身軽なボディに過剰になり過ぎない充分なパワー。こんなにエキサイティングなFFスポーツは、ほんとうに久しぶりといっていい。
取材に同行した編集部員と一致した結論は、「コイツは現代のインテRですね」というもの。マジで傑作だと思います。
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