■驚かされたのは実車ならではの「塊感」
しかし、さらにクルマに近づいて観察してみると、クレイモデルがそのまま実車になったような「塊感」に驚かされる。
何というか、切り出したばかりのバターのように、段差がなく、ヌルっとしているのだ。
「チリが合う」などというレベルではない。本当にクルマ全体がヌルっとひとつの塊に見える。特にガラスとボディ鉄板部分の継ぎ目がすごい。よくぞここまで、と嘆息するばかりである。
新しいレンジは「MLAフレックス」と呼ばれる新設計のアーキテクチャーを採用している。さまざまなパワートレーンに対応が可能で、現状は4.4LのV8ガソリンターボに、3L直6ディーゼルターボマイルドハイブリッド、そして3L直6ガソリンプラグインハイブリッドの3種類が設定されている。PHVは出力105kwの強力モーターと組み合わされている。再来年には純EVも投入される予定であるという。
■思っていたよりも小回りが利くのは4輪操舵システムの恩恵
さっそくクルマに乗り込んでみよう。指定したのは3Lディーゼルのマイルドハイブリッド。
内装もまた息を呑むような高級感。丁寧に鞣(なめ)された革の匂いがプンと漂っている。運転席に着くと、ダッシュボード周りもまたキープコンセプトで前モデルとソックリだ。センター部から一段前に飛び出すように設置された13.1インチの大型ディスプレイだけが大きな変更点と言えようか。
さっそくエンジンをかける。静かだ。ゆっくりと走り出し、狭い駐車場から道に出る。大きな車体なので切り返しが必要か……と思ったら、一発で抜けることができた。驚くほど小回りが利く。低速時には後輪が最大で7.3度まで逆方向に舵を切る4輪操舵システムのおかげだ。
ふた昔ほど前に流行った4輪操舵。当時は違和感しかなく、あっという間に廃れてしまったが、最新のシステムはまったくの別物だ。この巨体で最小回転半径がVWゴルフと同じというのだから素晴らしい。
長い坂道を駆け上がる。静かだが力強い。タイヤが泣きを入れるほど攻め込んでも、あくまでジェントルなフィーリング。飛ばしてもノンビリ流しても、あくまでラグジュアリー。全力で走っても、髪も乱さずネクタイも緩まぬ英国紳士のような振る舞いだ。
それにしてもこの静かさはどうだ。サイドウィンドウは2枚の合わせガラスを使っているとのことだが、それだけではあるまい。
試乗後にランドローバー広報の方に尋ねると、実はアクティブノイズキャンセリングを採用しているとのこと。マイクで不快なノイズを拾い、車内に設置されたスピーカーから逆位相の音を出して、不快な音を打ち消してしまう例のアレだ。イヤフォンやヘッドフォンではおなじみだが、そのシステムが、丸々車内に設置されているのだ。スピーカーの数は13個。その効果は絶大だ。
新型レンジローバーは元祖高級SUVの意地を見せたような仕上がりだった。
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