ホンダ NSX 2370万円の国産スーパーカーに感じる「非常に深い断絶」とは

外観は小変更ながら意外なほど「効果あり」

従来型(左)と改良型(右)NSXのフロントマスク。これまでメッキ調だったグリルをボディ同色化したのに加え、メッシュパーツもマット仕上げからグロス仕上げへと変更

エスクテリアの変更としては、フロントグリルのメッキ部分をボディに同色にしたことが一番大きい。

以前のメッキグリルについて私は、「まるでマジンガーZじゃん!」「ダサすぎる!」と思っていた。それがボディ同色になり、かつその下のグリル部のブラックが、マット仕上げからグロス仕上げに変更されてより黒々としたおかげで、全体にシンプルで強そうな顔になった。

こちらもほんのわずかな変更だが、効果は一目瞭然。もちろん乗ってたら見えませんけど、すれ違うNSXを見て、「あ、ずいぶんカッコよくなったな」と思いました。

デザインのほうは、ほんのわずかな変更で、かなり印象が変わるものだ。グリルの最上部のメッキは、NSX最大の弱点とすら思っていたので、それがボディ同色に変更されたのは、個人的には「やってくれてありがとう!」だった。

初代と最新型でNSXの立ち位置は変わったのか?

1990年に発売された初代NSXと2019年仕様のNSX。ホンダが誇るスーパーカーの立ち位置は変わったのか? そこに共通するスピリットはあるのか?

ところで新型NSXは、スーパーカーファンにとってどんな存在なのか。

私の周囲でスーパーカーに乗っている者に聞いても、「NSXにはまったく興味がない」という反応に終始する。欲しいという話は一度も聞いたことがない。

NSXはスーパーカーではあるが、フェラーリやランボルギーニなどの欧州製スーパーカーとは、顧客層はほとんどかぶっていないのではないだろうか? 非常に深い断絶を感じる。

欧州製のスーパーカーは、狂気や情念のカタマリだ。イコール芸術性と言い換えてもいい。
しかし、NSXには狂気はない。あるのはひたすら技術だ。これは初代NSX時代から変わらない。

初代NSXが登場した頃、欧州製スーパーカーは狂気や情念だけで、技術が欠けていた。そんなとき、技術のカタマリのNSXが登場して、大きなショックを与えたのだ。

が、現在は、欧州製スーパーカーの技術は飛躍的に向上している。あくまでベースは芸術性だが、技術も同じくらいのレベルに追いついたようなイメージだ。欧州対ホンダの技術レベルは、F1グランプリの状況を見るとわかりやすい。かつてホンダは圧倒的な技術で勝利を重ねたが、近年は大苦戦している。

新型NSXに関しては、技術で26年間のブランクを埋め、欧州製スーパーカーと対等の走りを実現したが、いかんせん芸術性は最初からない。なにせサラリーマンが作ったクルマですから! グリルをメッキからボディ同色にしたくらいで、芸術的になるわけでもない。

NSXは“大衆車メーカーのスーパーカー”でいいのだ!

数少ない国産スーパーカー、NSX。開発陣がライバルにあげたランボルギーニ ウラカンやアウディR8なども同価格帯には世界の並み居るスーパーカーが存在する

しかし世の中には、クルマに芸術性を求めずに、むしろそういうものを暑苦しいと感じる人だっているだろう。そういう人にとって、NSXはうってつけだ。

欧州製スーパーカーは目立ちすぎるし肉食系すぎる、もっと落ち着いたスーパーカーに乗りたい、あるいは純粋にスーパーなメカに接したいという、理系脳を持った人とか。なにしろスーパーカーとして、こんなにマジメで落ち着いた雰囲気を持つクルマは他にない。「クワイエットモード」もあるし。

思えばNSXは、大衆車メーカーが作る、世界的にも珍しいスーパーカーだ。ユニクロがオートクチュールを作っているようなものなのだ。

それは凄い挑戦ではあるが、限界もある。

やはりスーパーカーは、本質的にはブランド品であり芸術品。ブランド力やデザイン力で劣るNSXが、スーパーカーの主流になることはないだろう。

でも、それでいいのだ。ホンダはNSXを大切に育ててほしい。スーパーカーのマイノリティでいいので!

■NSX(2019年モデル)/全長×全幅×全高:4490×1940×1215mm、ホイールベース:2630mm車重:1800kg、駆動方式:4WD(SH-AWD)、価格:2370万円

パワーユニット:3.5L V6ツインターボ(ハイブリッド)、エンジン最高出力:507ps/6500-7500rpm、エンジン最大トルク:56.1kgm/2000-6000rpm、モーター最高出力(前/後):37ps/48ps、モーター最大トルク(前/後):7.4kgm/15.1kgm

インテリアデザインに変更はないが、新色としてインディゴが追加された

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