デミオが2018年8月にマイナーチェンジした。しかもコンパクトカーなのに排気量アップという攻めの展開。
電動化全盛の時代になぜマツダはこのようなマイナーチェンジを敢行したのか。しかもお値段据え置きというではないか。
今回はライバルのフィットを連れ出してインプレッション。
文:鈴木直也/写真:平野学
ベストカー2018年12月10日号
■電動化の波に乗らないマツダの「らしさ」
マツダのユニークなところは、バブルともいえる電動化ブームのなかでも自分の主張を曲げないこと。
専門家なら「今後も多数を占めるであろう内燃機関の改良も重要」とわかっているが、それを主張するのは勇気が要る。誰しも守旧派と思われたくないからだ。
先日のマイナーチェンジで、デミオはガソリンエンジンモデルの排気量を1.3L→1.5Lに拡大したが、これもまたマツダならではのユニークな戦略といえる。
モード燃費狙いなら排気量が小さいほうが有利だが、実用面でそれがベストとはかぎらない。
燃費は数字そのものに価値があるのではなく、ドライバビリティやユーザー満足度を踏まえて「この走りでこの燃費なら素晴らしい」と評価されるべきもの。
1.5Lとなったデミオは、そこでライバルとの差別化を図っているわけだ。で、今回はそのあたりを検証すべく、燃費性能で定評のあるフィット13Gとともに、テストドライブを行ってみた。
■排気量アップで熱効率を改善する!?
走ったのは、東京から御殿場〜河口湖を回って帰ってくる周回コース。8割がた高速道路中心のルートであるが、上り坂となる東京~御殿場間で、わずかではあるがデミオがフィットを上回ったことには感心させられた。
理論上、低負荷域では小排気量が有利だが、負荷が大きくなるとエンジンそのものの効率が効いてくる。
デミオに搭載された1.5Lエンジンは、直噴の噴射圧力を上げて低回転/高負荷域を三段階噴射とするなど対ノック性を向上。
点火タイミングを遅らせずにすむということで、イコール熱効率が向上している。排気量拡大によって実用領域で2kgmほどトルクアップしているから、ドライバビリティも1.3L時代より力強い。
デミオのATはこのクラスとしては少数派の6速トルコンATだが、トルクが増えるのと反比例してシフトの機会は減り、同一ギアのままグーンと加速する、粘りのある走りを身につけている。
対するフィット13Gは軽快でよく走るのだが、デミオと比べるとエンジン回転上昇が先にくるCVT+排気量が小さいこともあって、やはり加速は回転で稼ぐタイプだった。
燃費の数字については、全体的にフィットがややリードという感じだが、ドライバビリティと燃費の総合評価では、デミオの排気量アップは間違いなく正解。
価格が変わっていないというのも、実に嬉しいことだと思います。
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