突き詰められたFRの真髄! スバルSTIによる超本気チューンモデル 500台限定 「BRZ tS」サーキット試乗【10年前の再録記事プレイバック】

突き詰められたFRの真髄! スバルSTIによる超本気チューンモデル 500台限定 「BRZ tS」サーキット試乗【10年前の再録記事プレイバック】

 STIがBRZを意のままに操れる気持ちいいハンドリングマシンとしてチューンしたのが500台限定の「BRZ tS」!! スバル車の操縦安定性に長年携わってきたニュルマイスターのSTI総監督、辰己英治が富士スピードウェイで走らせた!!(本稿は「ベストカー」2013年9月26日号に掲載した記事の再録版となります)

写真:茂呂幸正、スバル

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■STIならではのドライビングの愉しさを極限まで追求し、至高のハンドリングを実現

2013年8月4日開催のイベント「Fuji 86 Style with BRZ 2013」で初めて披露されたスバル BRZ tS
2013年8月4日開催のイベント「Fuji 86 Style with BRZ 2013」で初めて披露されたスバル BRZ tS

 真夏の炎天下まっただ中の2013年8月4日、富士スピードウェイを舞台に多くの86/BRZオーナーたちが集結する一大イベントが開催。

 そのイベントに出展していたSTIブースで公開されたのが、8月19日の発表日を目前にお披露目となったSTI製コンプリートカー、「BRZ tS」だ。

 数多くのBRZのデモカーがイベントで展示されていたなか、ひときわ来場者の目を引いたこのマシン。前号9/10号でBRZ tSの置き撮りカットのみ速報としてお届けしたが、今回はそのイベント時に富士スピードウェイの本コースをBRZ tSで走行した際のインプレッションについてお伝えしよう。

 この時、BRZ tSのステアリングを握っていたのは、ご存じSTIモータースポーツ統括部プロジェクト室室長でスーパーGTとNBRチームの総監督である辰己英治氏。

 初代レガシィをはじめ数多くのスバル車の操縦安定性の研究に長年携わり、2006年にSTIに転籍後、2009年からはニュルブルクリンク24時間レースのチーム監督を3年連続で務めた「ニュルマイスター」ともいうべき存在だ。

 走りについていっさいの妥協を許さない辰己氏だけに、市販を間近に控えたBRZ tSの仕上がり具合をどう感じたのかはスバリストならずとも気になるところだが、果たしてどうだったのか。試乗時の印象を聞いた。

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■重心の低さからくる素のモデルのよさにより一層の磨き

強靱でしなやかな走りを目指し、STIがこれまでのtSモデルと同様のチューニングを施したのがこのBRZ tSだ
強靱でしなやかな走りを目指し、STIがこれまでのtSモデルと同様のチューニングを施したのがこのBRZ tSだ

──実際に乗ってみて、まずどう感じましたか?

【辰己】そうですねえ、けっこうリニアなハンドリングに仕上がっていて、かなりいい感じになっていると実感しましたよ。なんといえばいいのかな、まさにスポーティな走りを体現できたんじゃないかなと思います。実際にサーキットを走ってみて「これなら自信を持って商品として送り出せる!」との思いがより一層深まりましたね。

──では、狙いどおりの仕上がりだと考えていいワケですね?

【辰己】ええ。STIの標榜する「強靱でしなやかな走り」の実現に加え、「人車一体の気持ちよさ」「自由自在に操る愉しみ」を感じられる究極のハンドリングマシンとして仕上がったということでしょうね。BRZはベースモデルからして軽量でコンパクトですし、重心の低さといったベースのよさがありますから。

インテリアのテーマは上質さとスポーティなマテリアルとの調和。専用スポーツメーターにアルカンターラ製のエンジンメーターバイザーは上質感あり
インテリアのテーマは上質さとスポーティなマテリアルとの調和。専用スポーツメーターにアルカンターラ製のエンジンメーターバイザーは上質感あり
ノーマルモデルとの変更点はエンジンスタータープッシュボタンに真紅のSTI製パーツが採用。赤ステッチ入りのシフトブーツも同じ
ノーマルモデルとの変更点はエンジンスタータープッシュボタンに真紅のSTI製パーツが採用。赤ステッチ入りのシフトブーツも同じ
STI製フレキシブルタワーバーフロントが幅をきかせるエンジンルーム内。基本的にエンジンはノーマルのままでチューニングされず
STI製フレキシブルタワーバーフロントが幅をきかせるエンジンルーム内。基本的にエンジンはノーマルのままでチューニングされず

──これまでのSTI製コンプリートカーとは違いますか?

【辰己】やはりインプレッサやレガシィは重心が高いので、BRZほど重心の低いスポーティな走りを実現させるのはベースから考えても難しいものです。背が高いモデルの場合、どんなに頑張ってもある程度の限界があるんですが、(BRZのように)重心が低いクルマの場合、これまでと同じようなチューニングを施してもレベルアップする度合いが大きいんですね。

 例えばインプレッサだとどうしても重心が高く、ルーフが重いんです。そうなるとスポーティにしたくても重心の高さに阻まれてしまう部分が出てきます。それがBRZにはないんですね。開発していく過程でベースの素性のよさというのを大きく感じることができましたね。

──そのあたりはユーザーが一般道で走行した場合でも明確に受け取ることができますか?

【辰己】ええ、そうですね。必ず乗ればわかってもらえると思いますよ。サーキットだけでいいクルマというのはあり得ませんから。サーキットで乗ってみて「いいクルマ」というのは、一般道で走らせてもやはり「いいクルマ」なんです。

──今回のBRZ tS、具体的にはどういった方向をねらったクルマなんでしょうか?

【辰己】考え方や使っているパーツなどは、これまでのtSモデルに準じたものですし、しなやかな乗り心地をねらっているのもほぼ同じです。つまり、今までのインプレッサWRX──STI tSやレガシィtSのようにSTIとしての取り組みは同じなんですけど、スポーティ度の高さが違っているんですよ。これは先ほどから述べているようにベースのよさなんですね。

──辰己さんが試乗してみて気になった点はありましたか?

【辰己】基本的にはねらいどおりの仕上がりだと思ったので特に感じませんでしたが、ただひとつだけ、個人的な好みからいうと「素のモデルの音」からしてちょっとうるさいかなあ、と(笑)。私のような年寄りが乗るクルマとしてはですね、これはもう今さらどうしようもないことなんですが(笑)。(tSの)走りの質感は非常にレベルが高くなっているのですが、ベースが音に気を配ったクルマではありませんからね。遮熱材や防音材は少ないんですけど、これはまあ、それが軽量化からくるスポーティさにもつながるので、あまり声高にはいえませんが。

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