アクセルを踏み込むと豹変!!
試乗車として割り振られたのは、2.4Lデュアルブーストハイブリッドの「RS アドバンスド」(税込640万円)。メーカーオプションで、ドライバーサポートパッケージ2、リアサポートパッケージ、電動ムーンルーフ、ブラックプレシャスメタルの特別塗装色など、約90万円が追加された、ゴージャスな仕様だ。
RS専用デザインの切削光輝+ブラック塗装21インチホイールにミシュランeプライマシー(225/45R21)を装着、後輪操舵システムは標準装備、電制ショックアブソーバーも標準装備される。また固定式パドルシフトと、ドライブモードも4+1段階(エコ、ノーマル、スポーツS、スポーツプラス、カスタム)用意されている。
エンジンをかけても唸り音が鳴る、ということもなく、電動走行で静かに走りだす。突起ショックやロードノイズには不利な21インチの大径タイヤを履いているのに、それをいっさい感じさせない、無音に近い発進走行は、「伝統的なクラウンらしさに溢れている」といえる。これらは、2.5Lハイブリッドも同様だ。
「RS」というからには、もうちょっとの迫力あるサウンドや、硬めの乗り心地を期待していたので、少々面食らってしまった。しかしその印象も、アクセルを踏み込むまでだった。
いよいよ試乗スタート。ワインディング走行を開始すると、この新型ユニットの特徴が見えてきた。アクセル開度が30パーセント以下であれば、通常の2.5Lハイブリッドと同じような特性だ。50~60km/hで流すワインディングでは、登坂も下りも何のストレスもなく走り、(その後に移動した高速道路での)120km/hでの高速巡行も粛々とこなす。
ただ、それ以上にアクセルを踏み込むと、パワートレインは豹変し、若干荒々しいエンジンサウンドを聞かせてくれる。さらにアクセルを踏み込めば、シフトアップを繰り返しながら、怒涛の加速をする。2.5Lハイブリッドの滑らかさもよいが、このユニットの刺激の強さには、魂を揺さぶられてしまった。
あくまでターボエンジンが駆動を主導し、モーターはエンジンを活かす脇役、といった印象。パドルシフトでのシフトダウン、シフトアップにも即座に反応し、吹けあがるエンジンサウンドを堪能することもできる。走ることが好きな諸氏は笑顔になること間違いない加速フィールが得られる。新型クラウンクロスオーバーの真骨頂は、確実にこの「RS」だ。
コーナリングの超絶気持ちよく、乗り心地も2.5HVより上質
またRSは、2.5Lハイブリッドよりもサスの動きが滑らかで、ダンピングがよく効いている。RSに標準装備される(2.5Lハイブリッドである「X」と「G」は、コンベンショナルなショックアブソーバー)電制ショックアブソーバーの効果であろう。2.5Lハイブリッドでは路面凹凸で跳ね上げられる挙動が出ることがあったが、RSでは上下のボディモーションが小さく抑えられるため(サスが伸びる側、フワつきが抑制される)、路面に張り付いたような印象だ。
試乗の際、新型クラウンクロスオーバーRSで少し跳ね上げられた、荒れた路面があったのだが、試乗会の帰り、乗っていったエアサス付のメルセデスCクラスワゴン(S205)で、同じ路面を通過した際はもっと揺れた。新型クラウンクロスオーバーRSの足のしなやかさを如実に感じた。
また、4輪のトラクションがすこぶる高い。コーナリング中に加速するシーンでも、安心してアクセルペダルを踏み込むことができる。心地よいヨーの変化を感じながら、前へと出るコーナリングは、まるでダウンフォースの効いた(地面に張り付く)後輪駆動のターボ車のようだ。
乗り心地に関しても、突起ショック(縮み側)、フワつき(伸び側)共に、2.5Lハイブリッドよりも優れている。シャシー開発者に確認すると、電制ショックによる恩恵は大きいが、DRS(後輪操舵)によってヨー方向の軽快感と安定感を生み出すことができたので、電制ショック特性はさらにソフトにでき、乗り心地はさらに上質なセッティングができたという。なお、コイルスプリングの硬さはRSと2.5Lハイブリッドで同等(軸重に対してバネ上共振合わせ)にセッティングしているそうだ。
つまり、新型クラウンクロスオーバーのRSは、それまでの「ロイヤル志向の2.5Lハイブリッド、アスリート志向のRS」という括りではなく、どちらの特徴も高いレベルで実現した「オールインワンモデル」といえる。
コメント
コメントの使い方経済性の2.5HVと、活発に走る2.4HV(デュアルブート)で全く性格が違うのは面白いと思いました。
今までどのメーカーも最大排気量のみスポーティみたいな設定が多かったですからね。これは並列で全く違う。
値段も大きく違うので、僅かですが小さい排気量なのもあって、2.4HVのRSを選ぶのは限られた一部になりそう。