アメリカなどですでに発売されている新型アコード。シュッとしたフロントフェイスやGoogle搭載のナビなど、先進性も感じるモデルだ。今回は国内向けモデルのプロトタイプに試乗。「クルマの完成度は高いけど……」というホンダのジレンマは解消されているのか? その理解にはインバウンド向けハンバーガーが役立ちそうです。
文:国沢光宏/写真:ホンダ
■あくまでも「アメリカの」ミドルクラス
すでにアメリカや中国などで先行発売されているアコードを日本でもリリースするという。今回試乗したのは日本仕様のプロトタイプ。といっても”ほぼ”このまま出てくると考えていいと思う。さて。クルマの場合、大ざっぱでいいから価格が解らないと評価しにくいが、アコードは544万9400円。
日本だと高額車の価格帯。といった観点からクルマを見たらいかがだろう? そもそも論で言えばアメリカに於けるアコードって、ミドルクラスに属す。日本とアメリカの平均年収を調べると、データベースによっても違うけれど500万円vs1000万円といったイメージ。
実際、アメリカ人と話をしてると、シビックが200万円。アコード250万円といった感覚のようだ。文字通りミドルクラスですね。 アコードをしっかり理解するため、もう少し続けよう。日本で本格的なハンバーガーを食べようとしたら、東京でもホンダの開発拠点である宇都宮でも1000円くらいだと思う。されどインバウンド人気のニセコ(北海道)では2000円のハンバーガーなど当たり前。少し手間の掛かった内容だと3000円だって珍しくない。
インバウンドの皆さん、2000円のハンバーガーを「リーズナブル!」。 宇都宮で2000円のハンバーガーをメニューに載せたらどうか? 圧倒的な高級感やボリュームを持ってなければ売れないと思う。アコードに戻る。このクルマ、アメリカではミドルクラスとして開発された。皆さん1000円のハンバーガーを食べる感覚で乗ってます。そいつを500万円というプライスタグ付けて日本で出したらどうか? おそらく「高級感もボリューム感も足りない」になる。
もう少し脱線します。タクシーに使われているクラウンコンフォートは5ナンバーボディだ。昭和の時代、クラウンもマークⅡも初代ソアラも5ナンバーだった。けれど今見たって「けっこうな存在感ですね!」。極端なことを書くと、アコードを今のサイズのままセンチュリーのような存在感のボディにしたら、500万円のプライスタグを付けたって売れると思う。
■ハンドリングは欧州車同等レベルの「いいクルマ」
ここから試乗レポートです。最近のホンダ車に共通することながら、ボディのシャッキリ感と乗り心地の上質さ、ハンドリングは素晴らしい! シビックの乗り味なんか最新のヨーロッパ車とガチで比べたって負けていない。
新型アコードを”タイヤがスキール音を出さないぎりぎり”で走らせたら、もはや文句なし! なるほどアメリカで高く評価されている理由が解る。最新世代の2モーターハイブリッドも洗練されており、エンジン静か。モーターアスシトの量は(モーターの存在感と言い換えていい)シビックからググッと増した。エンジンの高効率領域を30%拡大したという。
さらに生産国はタイ国ながら、ホンダの場合、工場による品質の差がほとんど無い。インテリアの素材を含めた質感や作りは日本生産と変わらないと思う。 航空機のアビオニクスに相当する電子装備関係ではグーグルのシステムが新しい。フルに試したワケじゃないから本当の実力こそ不明ながら、かなり確度の高い音声入力システムをもっており、少なくともナビゲーション機能は100点! 普通のナビなんか使う気にならなくなるだろう。
エクステリアさえ存在感を持たせてやれば、500万円のクルマとして十分納得できる。改めてクルマを降りて外からアコードを眺める。やはりデザインの存在感が500万円という価格に遠い。最近のトヨタ車の売れ行きを見ても解る通り、エクステリアって販売に大きな影響を与えます。
新しいアコード、どう見ても1000円のハンバーガーであり1000円のラーメンなのだった。相当のお金持ちか、アコードの熱烈なファンでなければ2000円出す気にはなれない。 素晴らしい仕上がりながら「商品」としての魅力を持っていると思えぬ新しいアコードを、ホンダはどうやって売ろうと考えているんだろうか?
私なら今のまんまのハードを使い、フィットをベースにWR-Vを作った如くボディ外板をドカ~ンと変える。さすれば日本だけで無く中国や新興国などでも高い値付けて売れるようになるだろう。繰り返すが、乗れば良いクルマです。
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