サーキットだけでなく「ストリートでも気持ちいい」を突き詰める
これまで大きなリアウィングなどはサーキット走行のためにあると思っていたので、こんな風に公道でも楽しめるとは目から鱗だった。一体どんな思想でテールゲートスポイラーが作られたのだろうと、開発責任者である水上寛之さんにお話を伺った。
「ホンダアクセスがクルマ作りにおいて大切にしているのは、ドライバーズカーとして常に『FUN』であることです。いかなる路面状況でもうまくコントロールできる安心感があり、どなたが乗っても意のままに気持ちよく走れること。Modulo Xなどの開発で培ってきた技術を、今回のウィングにも注ぎ込みました」
タイプRといえばサーキット性能なども注目されがちだが、ホンダアクセスがターゲットに据えたのは、むしろ日々の主戦場である「ストリート」だという。
「お客様がタイプRに乗るシーンは、ほとんどストリートです。だからこそ、テールゲートスポイラーもストリートでも最高に気持ちいいグランドツーリング性能を目指しました。ストリートはサーキットのようにキレイに整地されている道ばかりではありません。でも路面がデコボコしているところはありますし、レースなら走行中断を余儀なくされるような大雨でも走り続けなくてはなりません。
そんな風に常に変化する環境でも高い接地感を生み出し、誰が乗っても意のままに操れる一体感と懐の深さを求めて開発をしてきました。そのキーとなる技術が、私たちが提唱する『実効空力』です。
開発にあたっては、デザイナー、モデラー、設計、開発者の全員でテストコースに赴き、実際にステアリングを握って、その場で修正を加える、トライ&エラーを繰り返す開発フローを行いました。その結果生まれたのが、カッコイイ見た目と空力性能を両立させた造形なのです」
日常の速度域で体感できることを狙った緻密な空力設計
水上さんは、ウィングに施された緻密な空力メカニズムを解説してくれた。まず、主翼には軽飛行機やグライダーなどにも採用されている翼の断面形状「NACA 4412」を採用し、裏面まで綺麗に風を導く形状としている。それに加えて、ウィング後端にある「ガーニーフラップ形状」がリアのダウンフォースを高める。
「私たちはよく『4輪で舵を切る感覚』と言うのですが、前後のダウンフォースバランスを整えることで4つのタイヤを路面にきれいに接地させるように設計しています。Hさんが仰った『後席の乗り心地が良い』というのは、まさにこの狙い通りで、リアサスペンションがしっかり仕事をすることで、リアの振動の収まりがよくなり、同乗者の快適性にも繋がっています」
さらに、ガーニーフラップはウィングの中央部にのみ採用し、両サイドはあえて風を逃がすように形状を整えた。これにより、芯のある直進安定性を保ちながら、ハンドルを切り始めた瞬間にはスムーズに向きが変わる、気持ち良い旋回性を両立させている。
そしてサイドプレート(翼端板)は、フロントのAピラーと角度を合わせることで、車体側面に発生する大きな風の渦を遠くへと飛ばし、直進時のふらつきを抑える役割を持つ。極め付けは、ウィングの裏面に配置されたノコギリ刃のような「シェブロン」と呼ばれる実効空力デバイスだ。
「直進安定性を高めるほど、今度は逆に『曲がりにくさ』が出てしまいます。そこでこの『シェブロン』によって、乱流の渦を細かくして流してあげるんです。これによってヨー方向の動きを抑え、直進から旋回へと移行する瞬間、違和感なくスムーズにクルマが曲がってくれるようになります」




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