最近、欧米で利用が広がっている「リニューアブルディーゼル」(RD)は従来のディーゼル車でそのまま利用可能なドロップイン燃料で、エンジン側での対応や軽油との混合比の制限など「バイオディーゼル」の課題を解消した、より進んだ再生可能燃料だ。
この度、伊藤忠商事など4社がRDを最大40%軽油に混和した「RD40」燃料の流通拡大に向けた取組みを開始したと発表したが、ドロップイン燃料をあえて軽油に混ぜる背景には日本の国内規制の影響があるようだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/伊藤忠エネクス株式会社
伊藤忠などが「RD40」の流通拡大に向けた取組みを開始
2024年10月23日、伊藤忠商事株式会社、伊藤忠エネクス株式会社、株式会社INPEXの100パーセント子会社である株式会社INPEX JAPAN、及び株式会社INPEXロジスティクスの4社は、再生可能燃料である「リニューアブルディーゼル」(RD)を混和したディーゼル燃料の流通拡大に向けた取り組みを開始したことを発表した。
世界最大のリニューアブル燃料メーカーであるフィンランドのネステ(Neste OYJグループ)との協働により、軽油に最大40%のRDを混和した「RD40」を、9月下旬から商用ベースで製造・供給しているという。
RD40は地方税法上の軽油に該当する為、通常の軽油と混和することが可能だ。
今回供給を開始したのは、INPEXロジスティクスが北陸・甲信越地方で展開する石油製品の輸送を担うタンクローリー車18台向けで、伊藤忠グループとINPEXグループは、INPEXグループが有する北陸・甲信越地方を中心とする事業ネットワークを活かし、混和・給油に係る一連のサプライチェーン構築を進める。また、今後4社はRD40の全国展開も目指して取組みを進めることにしている。
伊藤忠商事は2021年5月にファミリーマートの店舗向け配送トラックの代替燃料として、国内初となるRD100%燃料の商用利用を実現している。また、伊藤忠エネクスと連携し、RD100%品の配送及び給油所整備など、サプライチェーンの構築を進め、運送業界や建設業界等における温室効果ガスの排出量削減に貢献して来た。
2022年6月には、INPEXグループが保有する石油製品輸送用のタンクローリー車で、日本初となるタンクローリー車でのRD使用を実現した。ネステの安定した供給実績と優れた製品品質は、日本の顧客からも高く評価されているという。
軽油と混ぜるのは国内規制のため?
廃食用油や動物油脂などのバイオマスを原料とするRDは、従来のディーゼルエンジンでそのまま燃焼可能な「ドロップイン燃料」であることが最大の特徴で、エンジン側での対応が必要な「バイオディーゼル」(FAME)とは異なる。
RDはその特性上、軽油と混和しても使用できるが、従来のディーゼル車を維持したまま再生可能エネルギーに移行するというドロップイン燃料としてのメリットは、化石燃料と混ぜることで失われてしまう。
あえて軽油と混和したRD40の流通拡大を目指すのは、国内規制に基づく制約のためだ。日本国内でRD100パーセント品を使用する場合、車両はRD専用車両となり、一般的に軽油との併用ができなくなってしまうからだ。
RD40はそうした制約を受けることなく軽油との併用が可能で、例えば走行中に燃料が不足したり、RDの供給が足りなくなった場合も軽油を継ぎ足すことができる。100%再生可能ではないがもちろん応分の脱炭素は可能で、国内規制への対応と利便性を両立するためRD40燃料によりRDの普及を図るということのようだ。
4社は今後も引き続き協業を続け、2025年度を目途にINPEXグループ及び伊藤忠グループが携わる陸上輸送、建設、空港、港湾、鉄道分野でも、協働してRD40の導入を目指すとしている。
なお、各社の役割だが、伊藤忠商事がネステよりRDを調達し、伊藤忠エネクスが軽油と混和しRD40燃料を製造、INPEXグループは自社でRD40を使用するほか北陸・甲信越地方でその需要を開拓するという。
【画像ギャラリー】RDを導入しているINPEXのタンクローリー(3枚)画像ギャラリー