米国ではトランプ政権の方針もあって、自動車メーカーが電動化戦略の見直しを進めているが、大型商用車の電動化は進んでいるようだ。
同じパッカーグループに属するケンワースとピータービルトは、北米市場向けの中型~大型ボンネットトラックに新型車となるバッテリーEVモデルを追加した。欧州でも評価が高いパッカー製の電動パワートレーンを搭載し、2026年に製造を開始する予定だ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Kenworth・Peterbilt・PACCAR Inc.
パッカーグループが北米市場で新型BEVトラック
米国のケンワースやピータービルト、オランダのDAFなどが所属するパッカーグループは2025年12月9日、北米市場に新型のバッテリーEV(BEV)トラックを導入した。
ケンワースの「T280E」「T380E」「T480E」、およびピータービルトの「536EV」「537EV」「548EV」だ。それぞれ米国の重量車区分でいう「クラス6」(総重量約8.8トン以上の中型トラック)から「クラス8」(同15トン以上の大型トラック)に相当する。
両社とも既に大型のBEVトラックはローンチしており、汎用性が求められる中~大型トラックの電動化を進め、ピックアップから集配送、ユーティリティ、地場輸送、特装車など、様々な用途に適合するゼロ排出ソリューションを強化する。
ケンワースは中型BEVトラックとしてはDAF製トラックがベースのCOE(キャブオーバー)タイプをラインナップしているが、北米市場で一般的なボンネットタイプの中型トラックにBEVを設定するのは両社とも初めてとなる。
2026年に製造を開始するといい、ケンワースでセールス&マーケティングを担当するアシスタントGMのケビン・ヘイグッド氏は次のように話している。
「新型の中型BEVトラックをローンチし、実践的でパワフル、そして柔軟なソリューションにより、お客様のゼロ排出輸送への移行を支援することにケンワースは真摯に取り組みます。T280E、T380E、T480Eは、お客様が弊社に期待するパフォーマンスと信頼性を実現するとともに、排出削減と静かな運行というメリットも提供します」。
パワートレーンにはパッカー製の電動パワートレーンを搭載している。いわゆるセントラルドライブ方式で、電動モーターがドライブシャフトを介して後輪を駆動する。170kW(連続230hp/ピーク335hp)から350kW(連続470hp/ピーク605hp)まで定格出力の異なる複数のモーターを用意する。
バッテリーはLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)で、1基当たり125kWh容量のバッテリーパックを車種により2~3基の構成となる。それぞれの構成で合計容量は250kWh/375kWhとなり、航続距離は最大280マイル(約450km)だ。全モデルが最大350kWでのDC急速充電機能を備え、1時間強でフル充電が可能だという。
ちなみにパッカーの電動パワートレーンは欧州向けではDAFの大型BEVトラック「XF/XDエレクトリック」にも搭載されている。同車はインターナショナル・トラックオブザイヤー2026に選出されるなど、セントラルドライブながらeアクスル方式に匹敵する効率性などが高く評価されている。
ケンワース/ピータービルトの中~大型BEVトラックの構成
ケンワース「T280E」はクラス6のミディアム・デューティに当たり、米国の免許制度上はCDL(商用ドライバーライセンス)が不要なクラス。GVW(車両総重量)は最大11.8トンだ。バッテリーパックは2基構成のみで、モーターは最大270kW出力となる。集配送や市街地での走行に最適だという。
いっぽう「T380E」はクラス7~8に相当し、単車トラックとともにトラクタ系も提供する。GVW/GCW(連結総重量)は最大15.0~22.7トン。2または3基のバッテリーと最大350kWのモーターが利用可能だ。公共事業や地場輸送などに適している。
クラス8の「T480E」も単車系とトラクタ系を用意し、2/3基のバッテリーと350kWモーターを搭載する。GCWは最大37.2トンで、ドレージ輸送や大型ダンプなど、中距離のトラクタ輸送や大型単車が必要な幅広い用途に適している。
4×2および6×4のアクスル構成と柔軟なホイールベース構成が、特装車フレンドリーな架装性をもたらしているといい、各車に電動PTOが工場出荷時に取り付け可能なオプションとして設定され、ボディメーカーによる2次架装にも対応する。既存のサスペンションとも組み合わせ可能な柔軟なアーキテクチャは、セントラルドライブ方式の利点だ。
パッカー製のパワートレーンは2基の電動モーターと3段のトランスミッションを組み合わせており、トルクの途切れないシームレスなシフトを実現している。電動モーターの出力特性はフラットだが、空車時と実車時などで出力変動の大きいトラックでは多段トランスミッションと組み合わせたほうが効率的な運転ができるとされる。回生ブレーキは3段階で調整可能だ。
なお、ピータービルトではクラス6に相当するのが「536EV」、クラス7~8が「537EV」、クラス8が「548EV」となる。パッカー製の電動パワートレーンなど、基本的な構成はケンワースと同等だ。両社ともゼロ排出を示すためにブルーのアクセントカラーを採用しており、内外装の所々に青の装飾があしらわれている。
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