バッテリーEV大型トラックの「電費」はどれくらい? ダイムラートラックが実運送でのデータを公開!

バッテリーEV大型トラックの「電費」はどれくらい? ダイムラートラックが実運送でのデータを公開!

 トラックを運行する上で燃料費はコストの大半を占める。大型トラックを電動化した場合の「電費」は、ディーゼル車の「燃費」に換算するとどれくらいになるのか? ダイムラーが自社の工場物流に投入したバッテリーEVトラックの事例を公開している。

 実運送に基づくデータは、日本がトラックの電動化を進める際にも参考になりそうだ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG

ダイムラーが自社物流の「実電費」データを公開

バッテリーEV大型トラックの「電費」はどれくらい? ダイムラートラックが実運送でのデータを公開!
ヴェルト工場のインバウンド物流に導入されている「eアクトロス600」

 運送業界の脱炭素化は欧州で加速している。2025年のEU市場では、車両総重量(GVW)16トン以上の大型バッテリーEV(BEV)トラックの新規登録台数が5000台を超え、前年比で51%の増加となった。

 ただし総台数に対する比率としては依然として約2%にとどまっており、CO2フリーの大型商用車がそのポテンシャルを発揮するには、ユーザーとなる運送会社が実際に行動を起こす必要がある。

 ダイムラートラックによると、そのための障壁となっているのが根強い「誤解」で、航続距離、経済性、充電インフラなどに関して正しく理解されていないという。

 そこで同社は自社物流を担うメルセデス・ベンツ・トラックスの顧客による広範な実運用データを公開することにした。BEVトラックによりできること・できたこと、日常業務での経済性と実際の条件下での総保有コスト(TCO)などを2026年6月17日公開のプレスリリースで伝えている。

 BEVトラックの「電費」は、ディーゼル車と比較してどうなのか? 今後、電動化が進むであろう日本にとっても参考になりそうだ。

インバウンド物流を電動化したメルセデス・ベンツ・トラックスの事例

バッテリーEV大型トラックの「電費」はどれくらい? ダイムラートラックが実運送でのデータを公開!
eアクトロス600は長距離輸送用のBEV大型トラックとなる

 メルセデス・ベンツ・トラックスはパワートレーンの変革を進めるとともに、自社の物流においてもBEVトラックを活用している。ドイツ国内の主要な生産拠点となっているガッゲナウ、カッセル、マンハイム、ヴェルト・アム・ラインの4工場は、今後数年のうちにインバウンド(工場への入荷)の全てを電動化するという目標を掲げている。

 現時点でも大型トラックの組み立てを行なうヴェルト工場ではインバウンドの30%が電動化されており、自社の大型BEVトラックとなる「eアクトロス」シリーズ(の第1世代と第2世代)が約80台、同社の生産ネットワークに投入されている。

 長距離輸送用の「eアクトロス600」も日常的に稼働しており、全車合計の累計走行距離は600万マイル(1000万km弱)に達する。

 ダイムラーは車両開発のために自社物流に投入したトラックからテレメトリーデータを収集しているそうで、およそ3000件の走行ルートと3100件の充電イベントを分析し、詳細な評価を行なった。公開されたデータはこれに基づくもので、その結果、BEVトラックによる輸送は、今日でも既に大規模運用が可能であることがわかったという。

 eアクトロスによる実運送の事例と評価は次のようなものとなる。

電気による長距離輸送は既に実現可能

バッテリーEV大型トラックの「電費」はどれくらい? ダイムラートラックが実運送でのデータを公開!
eアクトロス600の運転席

 最初の事例は、ウルムを拠点とする運送会社・ザイフェルト社のデータだ。ヴェルト工場とビーレフェルト間のルートにeアクトロス600を導入しており、連結総重量は平均で36トン。一日当たり600kmを走行している。充電の約半分は公共の充電施設を利用していた。

 高速道路の通行料金がかさむ長距離トラックだが、低炭素車の優遇政策があるためディーゼル車と比較して道路通行料金は月に4000ユーロ(約74万円)安くなった。年間で900万円近いコスト削減だ。温室効果ガスの排出量(CO2相当量、以下同じ)は年間で90トン減る。

 大型商用車で最大のコストが燃料費(あるいは電気代)となるが、11月から2月までの平均電費は、100km当たり100kWhだった。これを軽油の熱量から同社の基準でディーゼル車燃費に換算すると11L/100kmに相当するという。日本で一般的に用いられる「リッター燃費」を計算すると9.09km/L相当ということになる。

(余談となるが化石燃料は燃料性状等により発熱量が異なり、日本ではエネルギー源別の標準発熱量を資源エネルギー庁が発表している。軽油の真発熱量の2023年改訂値は35.59MJ/Lで、これに基づいてリッター燃費を計算し直すと9.89km/Lとなり、ダイムラーの計算とはやや異なる。以下、メーカーの発表値を用いる)

 大型車の燃費に馴染みがない方も多いかもしれないが、日本では省エネ法に基づくJH25モード燃費の目標値が、総重量20トン超の大型トラクタで「2.32km/L」となっている。いわば「ディーゼル車の大型トラクタでこれくらい走ったら省燃費」という公的な参考値が軽油1L当たり2.32kmである。

 同じ消費エネルギーで比較した場合、BEVはディーゼル車の4倍走る計算で、電気駆動の効率の高さは一目瞭然。駆動方式によるスペックの違いは、バッテリーと軽油の「エネルギー密度」の違いである。なお、厳冬期はBEVの電費が最も悪くなる季節であり、他の季節ならさらに差が開くだろう。

 同社によるとこのデータは、要求の厳しい長距離ルートであっても公共インフラを利用して信頼性の高い運用が可能であり、TCOにおいても経済的であることを示しているという。

シャトル運行ではディーゼル車より経済的

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2025年に発表された新型「eアクトロス400」(写真左)は、eアクトロス600(同右)とともにダイムラーの第2世代BEVとなる

 次の事例はバーデンに拠点を置くロジスティック・シュミット社による、ゲルマースハイム・ヴェルト工場間の短距離運行のデータだ。短距離ルートで1日8回のシャトル運行を行なっており、合計352kmを毎日走行する。GCWは平均30トンだった。

 電費は平均で114kWh/100kmを記録した。当然ながら長距離トラックと比較すれば燃費は悪化するが、ディーゼル車の燃費に換算すると12L/100kmに相当する。ここからリッター燃費を計算すると8.33km/Lとなり、JH25モード目標値の3.6倍だ。通行料金は月当たり2300ユーロ、排出量は年間56トン低減した。

 シャトル運行では、積み込み・積み降ろしの時間に充電を行なえるため、追加のダウンタイムが発生しない。つまり、大量のバッテリーを搭載する必要もなく、従来の運行を維持しつつ車両だけを置き換えることができた。

 多頻度で往復するためゼロ排出車に対する通行料金の割引率が高い地域で特に経済的となるほか、充電頻度が高いためオンサイト電力(物流施設に設置するソーラーパネルなど)を利用可能なケースでも、ディーゼル車より明らかに優れた経済性を発揮することを示している。

BEVは険しい地形に適している

バッテリーEV大型トラックの「電費」はどれくらい? ダイムラートラックが実運送でのデータを公開!
トラック製造130周年を記念して「メルセデス・ベンツ・ミュージアム」に展示されるeアクトロス600

 最も意外な結果となったのが最後の事例ではないだろうか。イタリアの南チロルからヴェルト工場へ、ヨーロッパアルプスを越える山岳ルートだ。

 ボルツァーノ(イタリア)に拠点を置くファーカム社の運行データで、総重量は最大で42トン、走行距離は1日当たり600kmに達する(ゼロ排出車に対する緩和措置としてEUは大型BEVトラックに対してGCW44トンを認めているが、ドイツでは42トンとなる)。

 つまりBEVトラックに認められている限界まで荷を積み、アップダウンの多い山道を走る厳しいルートだが、厳冬期の電費は92kWh/100kmを記録した。これはディーゼル車の10L/100kmに相当する。リッター燃費なら10.0km/Lだ。

 最も厳しいルートが、最も優れた電費を記録した理由はエネルギー回生(ブレーキによる制動力を電気に変換し、バッテリーに戻す技術)で、坂道の多いアルペンルートでは100km当たり25kWhを回生しており、システムが非常に高い効率で動作した。

 年間で90トンの排出削減と、月間で3900ユーロの通行料削減も実現し、TCOの観点からも険しい地形はBEVに適したルートとなる可能性が示された。

 こうした事例から、公共インフラが利用可能な長距離路線便、荷扱い中に充電可能であったりオンサイト電力が利用可能な短距離便、アップダウンが多く高い回生率が見込まれるルート便などは、高額なBEVトラックを投入しても早期に償却できそうだ。

【画像ギャラリー】「省電費」性能を実運行で証明したメルセデス・ベンツの「eアクトロス」シリーズ(8枚)画像ギャラリー

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