人命を奪う「安全規制」の欠陥
ドライバーとADASの両方がトレーラの検知に失敗したら、衝突は不可避だ。RUPDは致命的なリアアンダーランを防ぐための最後の砦となる。
その性能を試験するため、ユーロNCAPは安全性評価で5つ星を獲得している人気の乗用車(つまり、最も安全性が高いと評価された人気車種で、具体的にはテスラ「モデル3」が選ばれた)によるトレーラへの衝突試験を実施した。試験はドイツ、英国、スウェーデン、米国の国際パートナーの協力のもとに行なった。
欧州ではRUPDの国際規格であるUN ECE R58.03への準拠が2022年に義務化されており、英国とドイツではこれに準拠したトレーラで衝突試験を行なった。米国では自主的な規制であるIIHS(米国道路安全保険協会)の「タフガード」規格を満たすトレーラで試験した。なお、実際に衝突させる試験であるため車両のADASは無効化した。
乗用車の助手席側30%を時速56kmで衝突させる30%オフセット衝突試験では、シュミッツ・カーゴブル製のトレーラ後部が助手席を直撃し、ダミー人形の頭部および頸部に致命的なダメージを与えた。
また同じ速度での75%衝突では、クローネ製トレーラのRUPDのバーが破損し、運転手と乗員に対する保護が全く行なわれなかった。
シュミッツとクローネはいずれも欧州のトレーラ大手で、当然ながら法規に準拠したトレーラを販売している。それにも関わらずRUPDが所定の性能を発揮しなかったのは保護構造の耐衝撃性が不足しているためで、規格自体の欠陥が疑われるという。
ユーロNCAPは現行のR58.03規格は目的に合致しておらず、大幅な改善が必要と指摘している。
いっぽうで米国で自主的に制定されたIIHSのタフガード規格に準拠したトレーラは、時速56km(35mph)オフセット衝突でも乗用車の安全構造が設計通りに変形し、乗員を保護した。この規格は2017年に導入されたもので、今では米国市場の新車トレーラの70%に装着されている。
ユーロNCAPによると欧州トレーラも補強材を追加することでこの基準を満たすことができるという。
国際規格の見直しなら日本にも影響

こうした結果を受けて、ユーロNCAPはEU及び英国の当局に対して制度の改正を求めている。具体的には欧州の域内法の改正ではなく、国際規格のR58.03を米国規格(相当)に準拠するよう改正することを求めており、国際規格が改訂されれば日本メーカーにも一定の影響があるだろう。
国内では、国際規格を引用する形で保安基準が規定されており、日本自動車車体工業会が検査・取り付け等の基準を定めている。このため海外事例を根拠に国産車にも欠陥があると判断するのは早計だが、国産メーカーがRUPDの安全性を自主的に再チェックすることは歓迎すべきことだ。
ユーロNCAPはトレーラメーカーに対して人命保護に繋がる自主的な改修と、既存車両に後付けできるソリューションの導入を強く求めている。さらに、トラックのユーザーとなる運送事業者に対しても、不適切な装置を交換できるようトレーラメーカーに要請することを呼び掛けている。
ユーロNCAPの戦略開発ディレクターを務めるマシュー・エイブリー氏は次のように話している。
「国際的な調査によりトラック・トレーラ後部に装着するアンダーラン防止用ガードに深刻な欠陥があることがわかりました。この種の事故は死亡率が非常に高く、到底容認できるものではありません。欧州の法規制は致命的な事故を防ぐために緊急に更新しなければなりません。幸いなことに技術的なお手本となる規格が米国に存在します。改訂が早いほど、多くの命を救うことに繋がります」。
【画像ギャラリー】国際規格のアンダーラン防止装置に疑問符? ユーロNCAPの衝突試験(13枚)画像ギャラリー












