トラックの「アンダーラン防止装置」が機能しない!? 国際規格の欠陥で年間死者数は数百人に上る可能性も

トラックの「アンダーラン防止装置」が機能しない!? 国際規格の欠陥で年間死者数は数百人に上る可能性も

 乗用車がトラックの車体の下に潜り込む「アンダーラン事故」は、乗員がトラックと乗用車のフレームに挟まれ深刻なダメージを負うため重大事故になりやすい。これを防ぐための「後部突入防止装置」が義務化されており、国連が定める国際規格もある。

 ところが、ユーロNCAPが実際に衝突試験を行なったところ、国際規格に準拠したトレーラで装置がほとんど機能していなかった。国際規格に欠陥があることが疑われるため、当局に対して米国の任意規格相当に改正するよう呼び掛けている。

 また、これと関連して乗用車のADASが特定のトレーラを検知できないケースがあった。自動ブレーキが作動しない可能性があり、後部アンダーラン事故防止のため乗用車ドライバーも意識を高めなければならない。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Euro NCAP

国際規格のアンダーラン防止装置に欠陥か?

トラックの「アンダーラン防止装置」が機能しない!? 国際規格の欠陥で年間死者数は数百人に上る可能性も
ユーロNCAPの衝突試験により国際規格のアンダーラン防止装置が機能していないことが明らかに

 トラックの後部へ乗用車が追突する事故だけで、欧州では年間数百人の死者が発生している。

 大型トレーラなどに乗用車が突っ込むと、車高の違いから乗用車が下に潜り込み、乗員スペースが切り裂かれる。「アンダーラン」と呼ばれる事故で、両方の車体がハサミの刃のように乗員スペースをせん断する形となるため、ドライバーや同乗者に深刻なダメージを与える。

 こうしたアンダーラン事故を防止するため、世界の多くの国と地域でトラックに対する後部突入防止装置(RUPD=リア・アンダーラン・プロテクション・デバイス、あるいはRUPと呼ぶ。以下「RUPD」と表記する)の装着が義務化されている。

 もちろん日本や欧州でもRUPDは法に基づく強制装着であり、自動車関係の国際規格を制定している国連欧州経済委員会(UN ECE)の「R58.03」(協定規則第58号第3改訂版)が2026年現在の最新規格となっている。

 しかし、ユーロNCAPが実際に衝突試験を実施したところ、R58.03に対応する欧州製トレーラでRUPDがほとんど機能しておらず、EU加盟国と英国で毎年400人が命を落としている可能性があるという。ユーロNCAPは義務的なRUPDはその目的を果たしていないという結論を下した。

 また、乗用車側の先進運転支援システム(ADAS)の一部にもトレーラを正しく検知できないという問題があり、両方に存在する重大な脆弱性が、アンダーラン事故死者数高止まりの要因になっているという。

 ただし前者については既に技術的な解決策が存在し、北米市場の任意規格に準拠したRUPDは、衝突試験でも致命的な事故を防ぐことができると評価された。

旧型ADASにトレーラを認識できない「死角」

トラックの「アンダーラン防止装置」が機能しない!? 国際規格の欠陥で年間死者数は数百人に上る可能性も
旧型ADASが車両として認識できなかったスケルトントレーラ。コンテナを載せていない状態の海コンシャーシのこと

 安全装備としてADASの普及が急速に進んでいるが、電子の眼には一部のトレーラシャーシを車両として認識できないという欠陥があるようだ。

 これは、ユーロNCAPが自動緊急ブレーキ(AEB)の性能を測定するため実際の条件下で行なっている試験で明らかになったもので、試験対象の乗用車は全て、カメラとレーダーの両方による(比較的高性能な)ADASの搭載車だった。

 メーカーが車両性能を試験するための標準的なターゲット(GVT:グローバル・ビークル・ターゲット)に対しては、ユーロNCAPの試験でも対象車両のADASは有効に機能した。

 しかしGVT外の大型車、とりわけトレーラの検知率が低く、欧州の貨物輸送で最も一般的なカーテンサイダーのほか、海コン業界で「ホネ」と呼ばれるスケルトントレーラ(海上コンテナを載せていない状態の海コンシャーシ)、道路工事などで現場に車両が突っ込むことを防ぐ衝突保護車両などを検知できないケースがあった。

 また、最新型のADASと旧型のADASでは性能に大きな隔たりがあることもわかった。トレーラの検知に失敗したのは旧型のシステムで、新しいADASはトレーラにも対応できるとはいえ、車両の平均車齢は上がり続けており、現役車両のほぼ全てがトレーラを検知できるようになるまで15年はかかるという。

 乗用車のドライバーが世代によるADASの性能差を認識し、安全装備を過信せず、事故防止のための意識を高めていくことも重要だ。

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