液体化した水素を用いる燃料電池(FC)トラックが9月26日、水素満タン・補給なしで1000kmを走破した。独・ダイムラートラックの大型FCセミトラクタ試作車「メルセデス・ベンツGenH2トラック」が、公道において25トンの積荷を運びながら達成したもので、脱炭素と長距離トラック輸送の両立において、FCV(燃料電池車)の可能性を示したといえる。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
メルセデス・ベンツGenH2トラックとは
ダイムラートラックは、メルセデス・ベンツブランドの大型EVトラック「eアクトロス」「eエコニック」をすでに商品化、今秋には航続距離500kmクラスの長距離モデル「eアクトロス600」を投入する予定で、グループ企業の三菱ふそうが開発した小型EVトラック「eキャンター」も含めると、ラインナップ的にも技術的にも、トラックの電動化で最も進んでいる商用車メーカーのひとつといえる。
これらはバッテリーEVだが、航続距離1000km超の運行では、燃料電池(FC)を用いた電気自動車、すなわちFCVが最適というのが同社の考えだ。そのプロトタイプが「メルセデス・ベンツGenH2トラック(GenH2)」である。
GenH2も、eアクトロスと同じく大型トラック「アクトロス」をベースとするものの、パワートレインはFCシステム、高電圧バッテリー、電動アクスル(eアクスル)で構成されている。それを搭載するシャシーは、当初から欧州長距離トラック輸送の主力車型・セミトラクタ4×2フルエアサス車を前提としていた。
満タン1回で航続距離1000km以上を目指しているため、FCの燃料である水素は、現在のFCVが用いている水素ガス(気体)に対し、体積がその1/800で、車載の燃料タンクで大量に貯蔵できる液体水素(リキッド・ハイドロジェン、LH2)を使うことも、大きな特徴だ。