そもそもトラックGメンとは?
日本の輸送力不足の原因は、トラックドライバーの低賃金・長時間労働などにより担い手不足が深刻化していることに加えて、働き方改革関連法により2024年4月1日から自動車運転業務での時間外労働時間が制限されることの影響も大きい。
これに起因する諸問題を「物流の2024年問題」と総称しており、社会的な課題となっている。
働き方改革により輸送力不足が深刻化するのは本末転倒ではあるのだが、改革を進めなければ長時間労働や低賃金といった根本的な原因が解消されないというジレンマがある。またドライバーの働き方は、雇用する運送会社だけの問題ではなく、荷主・元請側の商慣行によるところが大きい。
こうした背景から、トラックドライバー等から積極的に情報を集めるとともに、荷主企業を監視するために今年7月に発足したのがトラックGメンだ。
荷主都合による長時間の恒常的な荷待ちや、運賃・料金を不当に据え置いたりする行為は、「違反原因行為」とされ、法に基づく取り締まりの対象となっている。トラックGメンの発足前と比べると、要請・働きかけともに大幅に増えており、国交省は「違反原因行為の解消に向けて迅速な対応が図られています」とした。
なお、貨物自動車運送事業法の「荷主対策の深度化」において「働きかけ」とは、違反原因行為を荷主がしている疑いがあると認められる場合に行なうもので、「要請」は違反原因行為を疑う相当の理由がある場合に行なう。要請してもなお改善されない場合は、さらに「勧告・公表」を行なうという規定がある。
また、「令和6年3月までの時限措置」としていたこれらの規定は、「標準的な運賃」制度とともに「当分の間」の措置へと改正されている。
荷主対策の強化にはドライバーの声が必要
情報提供を待つのではなく事業者へのプッシュ型の情報収集で荷主対策に躍動するトラックGメンだが、今後はさらに関係行政機関との連携を強化する。
10月からは荷主に対する関係行政機関との合同ヒアリングを実施することになっており、国交省のほか厚生労働省の「荷主特別対策担当官」をはじめとする関係行政機関の地方実施機関(経済産業局、農政局、労働局など)と連携し、荷主企業に対し、合同でヒアリングを行なう
さらに、11月及び12月には「集中監視月間」を実施するとした。
国交省は現在、全トラック事業者に対して、荷主による違反原因行為の実態を把握するための調査を実施しているが、その調査結果等と、これまでにトラックGメンが収集した情報の照らし合わせも行なっている。
集中監視月間に位置づけられた11~12月では、その状況に応じて、悪質な荷主に対して更なる措置を講じる。とりわけ、最も厳しい措置である「勧告・公表」まで踏み込むかも注目されそうだ。
いっぽうで、国交省や全日本トラック協会の担当者からは「運送事業者やトラックドライバーからの情報がまだまだ少ない」という声が上がっている。現場からの情報提供が無ければトラックGメンも動くことができない。
「お上のやっていることだから……」と斜に構えていては、せっかくのGメンの機能が活かされない。運送会社やドライバーがもっと能動的に声を上げることも必要なのではないだろうか。
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