ユニークなスタイリングと優れた走破性で有名な「メルセデス・ベンツ・ウニモグ」。日本でも、道路維持管理、構内整地、鉄道保線・工事などで重用されている多目的作業トラックだ。しかし、自動車の脱炭素化を進めている欧州では、このウニモグもいずれ、カーボンニュートラル化を迫られることになる。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck、CVC Nutzfahrzeug、フルロード編集部
ウニモグは電動化できない
ウニモグのメーカーであるダイムラー・トラックは、欧米日の各市場に投入する新型トラック・バスを、2039年までに、すべてカーボンニュートラル化する方針を打ち出している。
同社はすでに、大型・中型・小型トラックの市販バッテリーEV(BEV)モデルを発売、長距離用の燃料電池車(FCEV)の実用化開発も進めており、世界の商用車メーカーの最先端を走っていることは、まず疑いのないところだろう。
しかし、ウニモグは、電動化が不可能なトラックだ。それは、高い路外機動性を備えた総輪駆動シャシーだからではない。ウニモグ最大の特徴である着脱式作業装置(アタッチメントと呼ばれる)を使うための、「パワー・テイク・オフ装置」(PTO)や「高出力油圧システム」の電動化が難しいからである。
カーボンニュートラルでも公共インフラの維持で不可欠
PTOも油圧システムも、その動力の源は、最終的にウニモグの主機たるディーゼルエンジンに行き着く。その主機が電気モーターになるだけでは……という話にならないのは、電動車にする場合、PTOと油圧システムが、それぞれを駆動するための専用モーターを必要とするからだ。
そして、ウニモグのPTOや油圧システムを作動させるために最適な駆動用モーターは、現時点では存在しない。これらは特殊なモーターになるため、汎用品が使えないのである。
しかも、これらと接続することになる作業装置のほうも、駆動用モーターの制御に対応した装置の開発・製造には、高度な技術と多額のコストが必要だ。そうなると、もともと決して安くはない特殊な作業装置が、いよいよ非現実的な値段になってしまう。
このように、もしも今ウニモグを電動化してしまうと、作業装置で維持されてきた公共インフラを、メンテナンスあるいは修繕できなくなる。これは決してオーバーな表現ではない。ウニモグにとって代われる電動の多目的作業車など、これもまた、どこにも存在しないからである。