ダイムラーが選んだウニモグのCN化とは
そこでダイムラーが選んだのは、EV化でもFCEV化でもなく、ウニモグを引き続きエンジンで動かすが、かわりに燃料として水素を使う、いわゆる「水素エンジン」の採用である。
水素エンジン化したウニモグであれば、いままでのPTOと油圧システムがそのまま使え、同じくアタッチメント類も、作業性や信頼性、耐久性が確立された特殊な装置をマウントすることができる。そして、社会の要請であるカーボンニュートラル化にも応えられる、というわけだ。
同社は最近まで、対外的にはもっぱら電動化をアピールしていたが、実は2021年7月から、連邦経済・気候保護省の支援を受けた研究プロジェクト「WaVe」(Wasserstoff Verbrennungsmotor=水素内燃エンジン)として、実機の開発を行なっていたのである。
その水素エンジンを搭載したウニモグのプロトタイプ「WaVeデモンストレーター」が2023年3月、ついに公表された。
ウニモグに求められる動力性能を確保
今年9月、ウニモグWaVeデモンストレーター実車を見学する機会があり、開発を担当している技術スタッフにお話しをうかがうことができた。
WaVeデモンストレーターは、日本では「多目的作業型ウニモグ」として通称される『405シリーズ』の、U430・ホイールベース3.6m・Euro-VI排ガス規制適合車(C405.125)をベースとしている。
水素エンジンも、ベース車が搭載する排気量7.7リッター・直列6気筒ターボ付ディーゼル「OM936LA」を使って、火花点火式のオットーサイクル機関へ改造したものだ。燃料噴射系は、シングルポイントの吸気ポート噴射というごくオーソドックスなもので、ターボチャージャーも過給圧を落として使っているという。
これは、実物の水素エンジンを使っての研究が目的ゆえだが、それでも最高出力は290~300PSで同等(ベースは299PS)、最大トルクは1050Nm(107kgm)で、こちらは150Nm低下しているものの、ウニモグが架装する作業装置への動力または油圧供給に必要な低速トルク特性を、充分に確保できているという話だった。
ただ、カーボンニュートラルな水素であっても、燃焼によってNOxを含む排出ガスが生じる。WaVeデモンストレーターでは、ベース車の排ガス後処理装置(尿素SCR+DPF)をそのまま利用しているが、オットーサイクル・ポート噴射の水素エンジン車には重厚すぎる装置で、もしも排気量に見合う三元触媒があれば、それで充分に浄化できるとみられる。