高度6500メートルにEVトラック!? 「世界一高い火山」で電動車両の世界記録を達成!

記録達成への壮大な旅路

高度6500メートルにEVトラック!? 「世界一高い火山」で電動車両の世界記録を達成!
スイスのエンジニア3人が開発している太陽光で走る電動トラックは、最も厳しい条件も覆した

 欧州のスイスで開発されているソーラー電動トラックの移動が始まったのは2023年9月の始めだという。

 スイスのセーヴェレンを出発したトラックはオランダのロッテルダム港で40フィート背高コンテナに積み込まれ、海路で南米へ。約1か月でチリのサンアントニオ港へ到着すると、オホス・デル・サラードのふもとにあるマリクンガ塩湖に移動した。ここまでの輸送はゲブルダー・バイスが担った。

 ピーク・エボリューション・チームの3人の探検家と車両は低酸素環境への順応のため、高度3400メートル地点で最初の高地順化を行なった。11月末に高度5200メートルのキャンプ・アタカマで再び高地順化を行ない、世界記録となる6000メートルに到達。12月、山頂付近へのアタックを行ない記録を高度6500メートルまで伸ばした。

 アンデス山脈の高地は地形も環境も極端な場所であり、世界で最も高い活火山はハイテク車両だけでなく、チームメンバーの肉体と精神に対する試練でもあった。コラーCEOは今回の記録達成を次のように総括した。

 「この極端な環境にも関わらず、私たちが開発したトラックは他のどんな車両より高くまで登りました。しかも使用したのは太陽光によるエネルギーだけです。この瞬間のために私たちは4年に及ぶトレーニングを実施しましたが、その間に『諦める』という選択肢はありませんでした」。

 記録達成後、チームはスイスに戻り、車両も無事に欧州に戻れるようにゲブルダー・バイスが輸送を行なっているそうだ。

 運送業で世界最古の伝統を持つゲブルダー・バイスは、トラックの電動化や自動運転など物流の持続可能性のための取り組みを進めるいっぽうで、今後もこうした前向きなプロジェクト(例えばオーストリア宇宙フォーラムの「火星ミッション」など)を支援して行く予定だ。

世界記録を達成したトラックの詳細

高度6500メートルにEVトラック!? 「世界一高い火山」で電動車両の世界記録を達成!
海抜6000メートルを超えるには乗員と撮影クルー、そして車両にも高地順化が必要

 世界記録達成車の「テレン」(TERREN)は、農業機械・特殊車両などを製造するスイスの多国籍企業Aebiシュミットのユーティリティ・ビークル「VT450」をベースに、ピーク・エボリューション・チームが2018年に興したDDPイノベーション社が開発している。

 電気駆動の4WDトラックで、ボッシュ製の120kWモーター2基を搭載する。バッテリーはスイスのエコボルタ製で容量は90kWh。低温・低気圧への対策が施されており、電圧を通常の400Vから300Vへ下げたのもこのためだという。バッテリーパックを3基並列に接続するのはバッテリーがダメージを受けた際の冗長性を確保するため。

 タイヤは道路を走行する際は低転がり抵抗のタイヤを履くが、オフロードでは接地面積を増やしトラクションを確保するため、軟らかいコンパウンドを採用したオフロードタイヤを装着する。

 ごく普通の箱車に見えるボディ(荷台)だが、超軽量断熱構造のサンドイッチパネルでできている。剛性を高めたボディは資機材を安全に運ぶことに加えて、悪天候時には乗員のためのセーフ・ヘイブンになるという重要な役割がある。

 2基備えるウィンチ(耐荷重9トン)は、地形が厳しい場合の安全確保や、車両のリカバリーに使用する。ウィンチ取り付け位置は可変。

 エネルギーはすべて太陽光から得ており、ルーフに4枚のソーラーパネルを装備する。一枚当たりの発電能力は370Wだ。また、荷台に16枚のパネルを積んでおり、好天時はこれを広げて車両を充電する。パネル20枚の合計出力は最大7.4kWとなり、条件が良ければ5時間の発電で150kmを走行できる計算だ。

 挑戦が長期に及ぶため、電気は走行用だけでなく乗員の生活等にも活用する。

 太陽光のエネルギーを最大限に活用するため、パネルと接続するソーラーチャージャーを5基備え、高度毎に最適化が可能だという。この他、24Vのソーラーパネルと300Vの車両系への電圧変換に高効率のDC/DCコンバーターを、またコンピューターや撮影機材のために230V ACインバーターを搭載している。

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