電動化に熱心だったヨーロッパの自動車メーカーが、軒並み岐路に立たされている。中国車、特にBYDの急速な躍進が欧州勢に打撃を与えているのだ。生き馬の目を抜く中国EV市場の動向は、「微笑みの国」タイを観察すると見えてくる!?
※本稿は2026年1月のものです
文:鈴木直也/写真:フォルクスワーゲン、BYD、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2026年2月10日号
電動化第1ラウンドは欧州勢に大打撃!
ウクライナ戦争やトランプ関税に代表されるように、最近の世界経済はあまりにも不確定要素が多すぎる。
これに最も打撃を受けるのは「仕込み」に時間がかかる自動車産業だ。
たとえば、以前VWグループは2023~2027年の5カ年投資計画でEV戦略に1800億ユーロ(発表当時のレートで約26兆円!)を投じると発表した。
これはもちろん、バッテリーEV市場の成長を見込んでのことだが、その後に何が起きたかは皆さんご存知のとおり。世界的なインフレ、中国製BEVの急激な成長、突然のトランプ関税問題など、現在VWグループの経営は大きく揺らいでいる。
結果論だが、2020年頃はじまった電動化第1ラウンドで、VWをはじめとする欧州勢はそのリスクを読み誤ったと言わざるを得ない。
いっぽう、こういう難しい状況を比較的うまく切り抜けたのが日本勢だ。
代表的なのはトヨタが2023年4月の新体制方針説明会で提唱した「マルチパスウェイ」だが、他メーカーも電動化への過大な投資を控えたことで、電動化第2ラウンドへの余力を残している。
というわけで、問題は「次の一手」なのだが、そこに強力なライバルとして急成長してきたのが、中国製新興ブランドのBEV/PHEVだ。
先読みできない中国EV市場の動向
その代表はBYD。2020年からの5年で年間生産台数をほぼ10倍の460万台まで激増させ、BEVだけでいえばシェア約16%を占めるトップメーカーに成長している。
つまり、電動化第2ラウンドはBYDに代表される中華BEVとグローバル市場で激突すること必至。10年前まで誰も予想できなかった市場の大変動が起きているのだ。
ただ、中国の自動車市場は部外者にはわかりにくい。年間3000万台に迫る市場規模、毎週のように現われる新興ブランド、激烈な価格競争、そして朝令暮改の政策──。変化の速度は極めて速く、外部の人間がそのトレンドをリアルタイムで捉えることは至難のわざといっていい。
そのため、多くの自動車業界関係者が上海や北京の動向を注視しているのだが、ちょっと視線を少し南へずらし、ASEANの自動車生産ハブ、タイの自動車市場を観察してみると、こちらがなかなか面白い。
タイの自動車市場は年間60万台ほどで、その規模は中国に比べれば50分の1に過ぎない。
しかし、小さいが故にプレイヤーが限定され、市場の反応がくっきり見える。タイは中国とのFTA(自由貿易協定)を通じて中国製BEVが急速にシェアを伸ばしている。その実力をモニタリングするにはうってつけなのだ。
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