君知るや今どきのタイヤ屋の苦労!? 新雪のヤードでタイヤの入れ替え作業

君知るや今どきのタイヤ屋の苦労!? 新雪のヤードでタイヤの入れ替え作業

 「駕籠に乗る人担ぐ人 そのまた草鞋を作る人」なんてことを言いますが、トラックをはじめクルマの足元の面倒をみるタイヤ屋さんは、さしずめ現代の草鞋を作る人でしょうか?

 世の中にはさまざまな仕事があります。取り立てて意識をしたり注目されることはないにしても、この世はお互いが支え合って成り立っているんですね。商用車専門のタイヤマン・ハマダユキオさんも、人知れず仕事に励む一人です。今日も今日とて雪の積もり始めたヤードでタイヤの入れ替え作業に勤しんでいます。

文・イラスト/ハマダユキオ、写真/トラックマガジン「フルロード」編集部

真冬のタイヤ屋は閑散期

君知るや今どきのタイヤ屋の苦労!? 新雪のヤードでタイヤの入れ替え作業
トラックのタイヤって、重いんです

 1月下旬~2月中旬の真冬は、日が長くなって来るとはいえ寒さは本格的。先日も非降雪地域の関東地方の南部でも積雪がございましたね。皆様はどうでしたでしょうか?

 我々のような生産財、つまりトラック用のタイヤをメインに扱っているタイヤ屋は、この時期はどちらかというと閑散期でございまして、取り引きしているユーザー様は前年~年明けにはほぼスタッドレスタイヤへの履き替えを完了しています。

 ちらほらとあるまだ履き替えをしてない車両や、秋口に早めに履き替えをした車両のローテーション等で凌いでいる状況です。

 関東地方で積雪があると一般ユーザー様の履き替えが多少あるものの、多くはスタッドレスタイヤやタイヤチェーンの在庫が豊富な量販店へ流れて行きますので、正直忙しくはありません。

 南関東での積雪はお祭り騒ぎのようになりますが、一般車両の立ち往生や事故等で交通麻痺が充分に考えられるため、場合によっては本部から早めの帰宅の指示があります。そんなサプライズの恩恵を受けられるかと思いきや、積雪による忘れられない良き(?)想い出もあるので、今回はそのことについて書きたいと思います。

積雪の思い出

君知るや今どきのタイヤ屋の苦労!? 新雪のヤードでタイヤの入れ替え作業
エッ、タイヤを入れ替えるクルマってあんなに離れているの!?

 数年前、昼過ぎから雨が雪に変わり、大雪になったことがありました。当時、まだ作業は予約制ではなく、午前中に数台作業したものの、雪の影響で昼からはさっぱりです。

 ユーザー様からの電話もほとんど無く、あるのは一般ユーザー様からのチェーンのお問い合わせくらい。チェーンは季節モノですので長期在庫品になる恐れがあり、メインのトラック用チェーン以外はお取り寄せとなります。乗用車サイズはバリエーションも豊か過ぎるので在庫しておりません。

 来店数も極端に減り、いよいよ本格的に雪が降り始め店の前も真っ白に……。「今日は早仕舞いかな」と思った矢先、ひとりのセールスのケータイが鳴ります。

 営業時間内にセールス直電は、取り引きのあるユーザー様の緊急事態か、他県など出先でのタイヤトラブルです。聞こえてくる会話を分析するとなんかいや~な予感が……。

「ハマさん、出張作業行かね?」

 四の五の言っても受けてしまった案件ですから、

「行こうか。ちなみに何処?」
「◯◯運輸の車庫」
「なんかタイヤ持っていく? パンク? バースト?」
「いや、なんかとりあえず来てくれって」

 この◯◯運輸さんは来店作業はほぼ無く、70台近くある車両の履き替えを全て車庫(全部で4箇所あります)で実施しています。晩秋からコツコツ車庫で履き替えを実施し、どうしても捕まらない車両は休日にも作業しています。

 全車両の履き替えが年明けには完了しているので、車両の代替えなら新品だろうし、パンクやバーストならその事を真っ先に言うハズ。不安を抱えながらその担当セールスと車庫に行くと、◯◯運輸の担当さんがマイカーの横に立って待っていました。

「悪いねぇ~。で、頼みたいのはあの車両のスタッドレスタイヤと、こっちの車両のスタッドレスタイヤを入れ替えてくれない? 明日東北に行くんだよね……」

 ここで補足説明をしますと、トラック用スタッドレスタイヤには「氷上系」と「総合系」があります。凍結路に強い氷上系は東北など寒冷地ではメインのパターンで、柔らかいトレッドゴムと細いパターンが特徴。

 関東地方などでメインの総合系は、タイヤに必要な性能が均等になるように作られたスタッドレスタイヤで、氷上系より摩耗には強い味方ものの、凍結路はあまり得意ではないイメージです。

 ◯◯運輸さんは、この時の担当セールスが他メーカー系から数年掛けて全車取り引きするようになり、この大雪の年が初めての「全車」でした。夏タイヤも冬タイヤもウチで保管管理する代わりに、サイズもほとんど揃っていたので車番管理ではなくタイヤサイズ管理でした。

 そしてこの年からは弊社の属するメーカーの総合系を装着する契約でしたが、当然、以前に取り引きのあった他社メーカーさんのタイヤも残っているので、先に他メーカーさんのスタッドレスタイヤから装着しておりました。

 その事も◯◯運輸さんの車両担当さんには伝えて了承済みだったので装着ミスではないのですが、雰囲気的に「なんでこっちにこのタイヤ入れたかな~? 頼むよ!」みたいな感じです。

 入れ替えは4トン車でホイールは共にスチール。ホイールも使い回しで車庫で数台組み換えする時は、次の車両のタイヤをその前に外したホイールに組んだりもします。

 ですので、2台で合計12本だけの脱着なのですが……、この車庫、さまざまなことから難易度が高めです。フカフカの砂利敷きで、雨が降ると湖になります。雨が上がっても暫くはタイヤの周辺だけ水溜り。逆に晴れが続き風が吹くと砂嵐級、雑草も元気で夏場は見たことないような虫刺され。

 広さもそこそこで、大型駐車可のコンビニくらいあります。今回はフカフカの新雪ですが、なんと入れ替え車両は広大な車庫の端と端です。サービスカーのエアホースを延長しても届きません。

 ジャッキも押しても引いてもいつもより更に動かず、ジャッキを下回りに入れたいけど、まず雪かきから。午前中は雨だったので地盤もゆるゆるで、安全性を考え、一箇所ずつ上げての作業。

 店舗のピットで並べて作業したら一人でも30分掛からない作業ですが、このときはなんだかんだと大汗かいて2人で一時間半くらいかかったかな? だけどこの「研修」を境に、どんな現場でも楽に思えたので、◯◯運輸さんには感謝です。

【画像ギャラリー】雪道の安全を支えるトラック用冬タイヤとタイヤ屋さん(5枚)画像ギャラリー

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