アメリカでオーナーオペレーター(自らトラックを保有し輸送を行なう事業者)として各地を駆け巡るPUNKさんは、日本人だけどアメリカ国籍を取得したアメリカントラッカーだ。そんなPUNKさんが先ごろ開かれた「ジャパントラックショー2024」を機に日本に里帰り。
今でこそアメリカで53フィートのバントレーラをけん引しているが、30年以上前に日本でキャリアカーを運転していた経歴の持ち主。そんなPUNKさんがジャパントラックショーの会場で出会ったのは、最新のキャリアトレーラだった。
文/なでしこトラッカーPUNK、写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
浜名ワークスのキャリアトレーラに注目
私は約33年前に日本で7台積み積載車のキャリアカー運転手として6〜7年仕事をしていました。アメリカ渡米後もイミグレーション(グリーンカード)取得後に、キャリアを活かしてしばらく同じ職種に就いていました。
そういう経緯もあって、ジャパントラックショーの会場で真っ先に注目したのは浜名ワークスのキャリアトレーラでした。
30年以上前のキャリアカーと今の車両とどんな違いがあるのか? どのように進化しているのか? とても興味深かったのです。早速その違いを見てみましょう。
まず初めに目が行ったのは、トレーラの昇降台に載せられているクルマのタイヤに固縛されているストラップ(ラッシングベルト)です。
私が日本で扱っていた時代は、ほとんどが直径1センチほどのワイヤーに鉄製のフックが付いたものでした。クルマの下に潜って穴に引っ掛け、昇降台に付いている荷締めのレバー(ガッチャと呼んでいた)を左右に動かし、引っ掛けたワイヤーがしっかりと締め付けられるまでガチャガチャ動かしていました。
今はワイヤーを使わず短いラッシングベルトでタイヤ4点を個別に固縛しているんですね。昇降台に対して垂直に締め付けるのが理想ですが、以前だと載せた車両の位置によってワイヤーの留め金が前後に動かせなかったんです。そのため締め付けが不十分で、タイヤの落とし穴がない車両では、若干車両が動くことがありました。
そうならないようにクルマの大きさや位置を考えながら積んでいた記憶があります。固縛ポイントが移動できるストラップなら、しっかりタイヤ4点固定ができますね。ワイヤーだと切れた時に付け替えるのが大変だったのも覚えています。
アメリカで乗っていた2000年頃のキャリアカーは、クルマを載せる時にタイヤの落とし穴やストッパーを使わないので、動かないようにとても神経を使いました。
固縛もワイヤーやストラップではなく、チェーンを使っていました。腰の高さくらいある太いパイプのようなバー(棒)を使って体重をかけながらの締め付けでしたが、1カ所ずつなのでこっちを締めるとあっちが緩むの繰り返し。何回も締めなくてはならないので大変でしたが、アメリカも現在はストラップを使ってるみたいです。
小径ダブルタイヤに見る技術の進歩
浜名ワークスのキャリアトレーラの後方に行って気づいたのが、以前のようなシングルタイヤではなくダブルタイヤになっていることでした。タイヤササイズも小さくなっています。
昔はトレーラにタイヤハウスが出ていたので、その分横幅が狭く、下段に積む最後の積車の場合、運転席の窓から出ていたこともありました。今は積むクルマはタイヤの上に載せられるので、そういったこともないのでしょうね。
昇降台を下げる場合、昔は下段の商品車にぶつからないようにピンをセットしてから目視でチェックしながら動かしていたのですが、今はセンサーを使って理想のポイントで自動的にストップするシステムになっているそうです。
さらに後方に行くと、道板の違いを発見。下から出すタイプと横から持ち上げて降ろすタイプがありますが、下から道板を出すタイプは、持ち上げて落ちないようにセットしなくてもそのままずらしてスライドすれば簡単にセットできるようになっていました。ドライバーの負担を少しでも減らすような設計ですね。
ここまで進化すると、入ったばかりのあまり技量のないドライバーでもトレーニングをしっかり受ければ安全に作業ができるのではないでしょうか。ドライバー不足の問題を少しでも解消できるよう配慮されているんでしょうね。
もう1つ、昇降台を動かすのに油圧オイルを使用していますが、浜名ワークスからもう1台出品されていた秘匿運搬車両では従来の油圧オイルではなく、水が主成分になったものを使っているそうです。金魚を入れても生きていられるくらい環境に考慮された成分なんだとか。
私も油圧レバーを操作中にホースが突然破損して顔や体にかかった経験がありますが、これなら万一オイルが漏れても安心だし、汚染の心配もないですね。環境に優しいキャリアカーというのは嬉しいですね。
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