【バトル考察】
まず最初にダウンヒル対決が行われた。ロードスターのトオルは奮戦したものの、ハチロクを操る拓海とのレベル違いの走りに驚愕。最後は意地を張りすぎてしまい、側溝にタイヤを落としてクラッシュ、そのまま横転して敗北を喫した(幸いにもトオルにほぼ怪我はなかった)。
続いてヒルクライム。敦郎の番だが、拓海の走り=プロジェクトDの実力を目の当たりにして、スタート前から焦りを感じている。しかし、クラッシュするまで攻めきったトオルの頑張りに気持ちを奮い立たせ、スタートラインに立つことになる。
1本目のスタートはの立ち位置は、敦郎のスカイラインが前。スカイラインGTターボとRX-7という2台のハイパワーターボFR車が、迫力の排気音とともに猛然とダッシュする。プロジェクトDとの格の違いを実際に味わったトオルは、「勝ち目はないかもしれねーけど、せめて一本目は逃げ切れよ」と心の中で敦郎にエールを送る。
馬力で勝るスカイラインだが、FDは引き離されない。敦郎もすぐに「この黄色は、今までの相手とは格がちがう」と再確認したものの、「オレはオレの走りで行く!!」と、ドリフトなどハデなアクションなしの、サーキットでラップタイムを出す時のグリップ走行を実践する。
さらに、「ヒルクライムは馬力(パワー)だ!!」と言い切り、「この34の大がらなボディは、意識してブロックをしなくてもスペースをつぶしてくれている」と、ストレートでもコーナーでも有利であることを主張した。
ダウンヒルでハチロクが見せた側溝の上をショートカットする走法(ミゾ落とし)を阻止しようと、スカイラインはインを防いでいたが、RX-7に乗る啓介には拓海と同じ攻め方をするつもりは毛頭なかった(啓介の性格を知っていれば当然のことだが)。
コーナーをコンパクトにまとめてアクセル全開の時間を少しでも長くとることに重点をおいた走りを敢行するスカイラインに対し、後方にピタリとつけたRX-7のハンドルを握る啓介は、「甘いぜ、あんたの弱点見切った!!」と何かを悟る。
そして実際に、RX-7は終盤のコーナー立ち上がりでスカイラインに並び、そのまま抜き去った。「拮抗していたかに見えた2台のバトルは、この一瞬、あっけなく幕を閉じる」というナレーションの言う通り、あまりにも簡単な幕切れに、抜かれた敦郎はもとより、セブンスターリーフのメンバー、そして見ていた読者も呆気にとられるのだった。
バトル後、納得がいっていない敦郎は、高橋啓介のもとへ駆け寄り、尋ねた。「直線(ストレート)の加速は、こっちのクルマの方が上だと感じていたのはオレの錯覚なのか?」と。油断させるため、啓介がそれまで全開にするのを抑えていたと思ったのだ。
しかし実際はそうではなかった。啓介の答えは「立ち上がり重視のコーナリング」。それは走りの基本中の基本であり、敦郎も理解しているつもりだった。啓介の説明がいまいち下手だったというのはあるが(笑)、つまり、RX-7の走りが常識をも超えた凄まじく高いレベルにあったということでもある。
また余談だが、この時、「信じたくねーかもしれねーけど、現実をうけとめないと進歩はないぜ…」となかなかキビしい発言をするところも啓介らしい(笑)。
敦郎は「なんかもう、どうしようもなく、すげえや…」と諦めの境地に至り、さらにトオルは走り屋をやめる事になる。多くの走り屋たちは、いつか気づいてこの道の頂点を諦める。それがプロジェクトDに出会ったから早まっただけである。
■掲載巻と最新刊情報
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