伝説のクルママンガ『頭文字D』の名勝負を選出した「頭文字D名勝負列伝」が、読者のアンコールに答えて復活! 今回は、人気のバイプレーヤー池田竜次が挑んだ(挑まれた?)、“死神”初登場バトルを紹介する!
(新装版第20巻 Vol.542「死神」~Vol.546「因縁(後編)」)。
文/安藤修也、マンガ/しげの秀一
【登場車種】
■先行:日産・フェアレディZ(Z33型)
→ドライバーは「チーム・スパイラル」の「ゼロ」こと池田竜次。走り屋としては類まれなる説得力のあるセリフを吐き、坊主頭に濃いめのほうれい線というルックスが特徴。「プロジェクトD」に対して神奈川の第2ラインである「RT(レーシングチーム)カタギリ」が負けるとは予想していなかったが、第3ラインである自分たちの実力には絶対の自信を持っている。愛車はZ33型の赤いフェアレディZ。リアに吊り下げ式のGTウイングを装着している。
■後追い:日産・スカイラインGT-R(R32型)
→ドライバーは“死神”と呼ばれる男で、愛車はダークシルバーのR32型GT-R。夜な夜な走り屋にバトルを仕掛けては限界走行中に車体をぶつけるなどして事故らせようとする。箱根を走るものたちにはよく知られた存在であり、恐れられている。その正体はいずれわかるのだが……。
【バトルまでのあらすじ】
「プロジェクトD」と「RTカタギリ」のバトルが終了した後のある夜、池田竜次と奥山広也、「チーム・スパイラル」のふたりは箱根ターンパイクにいた。 「プロジェクトD」とのバトルを控え、練習とも気晴らしとも思えない走行をしていたようだ。
ともに「プロジェクトD」に負けない自信を持つ2人は「ざわついた夏も終わりだ…これで箱根も少しは静かになるさ…」などと会話をかわし、また池田が1人で走り始めた、その時だった───。
【バトル考察】
「RTカタギリ」の皆川が負けた要因について考えながら、池田がターンパイクの峠道を下っていると、後方から一台のクルマに張り付かれる。が、池田もこのエリアでは名の知れた男、決して焦ることなく、「どこのアホーか知らねえが地元のクルマじゃねえだろう」とたかを括り、「思い知らせてやる!!」とぶっちぎろうとする。
しかし、池田が渾身のチューニングを施したZ33のフル加速に対して、後方のクルマは引き離されることはなかった。日頃から冷静な池田も、次第に「このクルマの馬力(パワー)について来れるのか…!?」と動揺し始める。
途中、見知らぬ走り屋(車種はランエボ)が対向車としてすれ違った際、その乗員2人が、「あの特徴のあるテールランプで車種はわかる…いやな予感がする…」と、池田のZの後方につけたクルマが、箱根ではよく知られた“死神”であることを察する。
一瞬すれ違っただけの走り屋たちにも知られているということで、これまでこのあたりでいかに死神が悪行を重ねてきたかが思い知らされるシーンである。
そして、ついにその死神が仕掛けてくる。2台が左コーナーに差し掛かろうとした瞬間、Z33の左リアにGT-Rがバンパーをぶつけてきたのだ。瞬間、Zはバランスを崩し、スピンしそうになる!
しかしそこは百戦錬磨の池田である「くそったれ…」と心のなかで叫びながら、カウンターを当ててなんとかスピンから逃れ、アウト側のガードレールにもぶつからずにコーナーを潜り抜けたのだった。
「こんなまねをする奴ァ、オレが知る限りたった一人しかいない。まちがいない。あいつが出やがった」と、池田も後方にいるのが、あの“死神”のGT-Rであることを確信。
Z33の後方に着実に張り付き、相手を貶めるのに最高の瞬間を狙って上手くこづくことから、死神が猛烈に高いレベルのテクニックを持っていることもうかがい知れる。
間髪入れずに、次の右の高速コーナーでも、死神のGT-Rは「トン」と車体をぶつけてくる。接触自体は軽いものだが、なにせかなりスピードが出ている状態、かつコントローラブルなコーナリング走行中である。さすがの池田も……と危惧するが、またもや、なんとかZ33は体勢を立て直した。
ここまで自らの力を発揮する絶好の舞台であるかのように、死神のGT-Rを引き離そうと考えていた池田だったが、「引き離すつもりでめいっぱい攻め込んだ」コーナーで後からつつかれ、ついに相手の速さを認めた。「いかれた頭にそのスピードはとんでもない凶器だな。それなりにあらっぽい対応をしないとオレもあぶねえか…」と一瞬考えるのだが、すぐに思い直す。
「大事なクルマを傷めたくねえ」ということで、池田はウインカーを出して、死神のGT-Rに先を譲るのだった。「ハラ立たしいが今日のところはおりる。この借りは必ず返すぜ、死神…!!」と。このまま走り続けて、マシンがダメージを負ってしまっては、プロジェクトDとバトルをする際に致命傷にもなりかねないと悟ったのだった。
「大事なクルマを傷めたくねえ」ということで、池田はウインカーを出して、死神のGT-Rに先を譲るのだった。「ハラ立たしいが今日のところはおりる。この借りは必ず返すぜ、死神…!!」と。このまま走り続けて、マシンがダメージを負ってしまっては、プロジェクトDとバトルをする際に致命傷にもなりかねないと悟ったのだった。
ここで初めて死神の顔がひとコマだけ描写される。長い髪で目元はよく見えないが、鼻筋の通った整った顔立ちである。そして「オイオイ…つきあいわるいな…その程度かよ、スパイラルのゼロも…」と心のなかでつぶやきながら、GT-Rは峠道の先へとカッ飛んでいくのだった。
池田にとってみれば、これから好敵手である「プロジェクトD」とのバトルを迎えようという時に、メンタル的には手痛い敗戦である。しかし、マシンにダメージが蓄積せぬよう自ら戦いの場から降りた、その判断に関しては、池田のクレバーさを示した名シーンでもあった。
■掲載巻と最新刊情報
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