「We Overtake Tesla(我々はテスラを超える)」、「2030年に完全自動運転EVを1万台量産する」と、これまでの自動車界の常識を飛び越えた目標に突き進むスタートアップ企業がある。将棋AIを開発し、名人を倒したエンジニア、山本一成氏がCEOを務める「Turing」だ。今回Turingは、東京ビッグサイトで開催中のジャパンモビリティショー2023へ初出展した。以下、Turingのブースの取材内容をお伝えします。
文/ベストカーWeb編集部、写真/森山良雄
■「2030年に完全自動運転EVを1万台量産」
「今回出品したこの”Turing Machine Alpha”は、仮ナンバーをとれば公道を走ることができます。そういうふうに作りました。わたしたちは(自動車にまつわる)ソフトウェア開発の会社だと思われがちですが、(仮に「ソフト開発」だと商売相手は納品先の自動車メーカーとなるが)そうではなく、あくまで一般のお客さま、B to Bではなく、B to Cの会社です。だからこそ、きちんと日本の公道を走ることができるコンセプトカーを製作しました」
そう解説してくれたのは、Turingの車両開発部長・徳地佑悟氏。ジャパンモビリティショーへの初出展にあたり、コンセプトカー「Turing Machine Alpha」を持ち込んだ。しっかり作り込まれ、完成度は非常に高い。保安基準を通っているあたり、数年後に量産まで持ち込むという話の「本気度」を感じる。
センターコンソールには大きめなモニターが設置され、走行中はここに「進む道」が示される。現在実験中のシステムでは、ハンドルに手を添えるだけで操舵も加減速も車両が行ない、一定の条件から外れると操作権がドライバーへシームレスに移行する仕組み。
システム全体にAIを活用しており、昨今のAIの長足の進化によってAIを組み込んだ車両開発は業界全体で加速している。Turingの注目度は今後さらに上がってゆくだろう。
「このクルマ(Turing Machine Alpha)は、あるOEMメーカーさんのBEVをベースにしているのですが(内装を見れば「日産リーフだな」とわかりました)、タイヤとハンドルの位置関係はベース車とまったく同じです。そういった車両の基礎的な部分はそのままで(つまり自動車メーカーが積み重ねてきたシャシー系の技術はそのまま受け継いで)、デザイナーさんに(全体のデザインを)”ものすごくカッコよくしてください”と頼みました。美観に優れていて、スポーティで、多くの人が乗ってみたいと感じるような。ただバッテリーを大量に積んでいるので普通に作るとすごく重くなってしまうため、ボディ下部はパイプレームを使っています」
先日、自工会の豊田章男会長が、近年の各メーカーBEVの急速な進化(特に走行安定性やハンドリング方面)の理由のひとつに、「クルマ屋」と「ソフト屋」と「バッテリー屋」の協業がうまくかみ合ってきたこと、を挙げていた。
それぞれが得意分野を持ち寄ってよい商品を作る。それでユーザーが満足し、普及していく。それこそかつて「自動車」が辿ってきた道であったし、これからの「モビリティ」が進む道でもあるように思う。
冒頭にあるとおり、Turingは2030年、7年後に「完全自動運転EVを1万台量産する」という大変な目標を掲げている。旧来の常識を持つ人は「そんな無茶な」と思うだろうが、イーロン・マスクも、スティーブ・ジョブズも、ジェフ・ベゾスも、そしてゴットリープ・ダイムラーもヘンリー・フォードも豊田喜一郎も本田宗一郎も、「そんな無茶な」と言われてきて、そのうえで技術と野心と仲間と、すこしばかりの運に恵まれて、「夢」を成し遂げてきた歴史がある。
Turing、応援しております。ぜひ日本の、世界のモビリティに風雲を起こしてほしい。
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