ジャパンモビリティショーのホンダブースではホンダジェットが大行列だが、それに負けじと存在をアピールしているのが「クルーズ オリジン」だ。2026年から東京都内を走るという自動運転タクシー車両なのだが、はたしてどんなクルマなのだろうか?
文/ベストカーWeb部、写真/ベストカーWeb編集部
■プラットフォームはGM、上屋はホンダが開発!
ぱっと見じゃ前も後ろも分からない、カボチャの馬車のようなクルマがジャパンモビリティショーのホンダブースに展示されている。それがクルーズ オリジン。2026年に東京都内を走り始める自動運転タクシーの車両だ。もちろん動力はフルエレクトリックとなる。
そもそもクルーズとは、2013年にカイル・ヴォクト氏が立ち上げた自動運転のスタートアップ企業だ。そのポテンシャルを見抜いたGMが2016年に5億8100万ドルで買収したが、さらに2018年にはホンダが27億5000万ドルを出資してパートナーに加わった。そこで得た資金を元に生まれたオリジナル車両がオリジンというわけだ。
オリジンのベースはGMが開発した電動プラットフォーム「アルティウム」で、その上に載るキャビンはホンダが手がけた。非常にフロアが低く乗り込みやすい印象を受けるが、車内にはホンダが培った日本流のおもてなしがあちこちに活かされているという。
冒頭では前も後ろも分からないと書いたが、ヘッドライトと赤いテールランプで前後が識別できる。前方のほうがわずかにフェンダーが長く、ルーフの上にLiDARを始めとするセンサー類が載っている。リアにはしっかりバックドアがあり、6人分の大型スーツケースが立てて置けるそうだ。
乗り降りは、見開きに開く大きなスライドドアから行う。これだけ大きなスライドドアで、しかも見開きに開く例は過去にないため、ホンダでは側突対応や開閉速度などを相当研究したそうだ。
車内に乗り込むと運転席らしきものはいっさいない。片側に3人、向かい合って6人が座れるレイアウトで、遊園地のアトラクションに乗り込んだような印象を受ける。室内は相当広く、向かい合う間にテーブルを置くことも楽勝だろう。シートを外せば車内は広大なラゲッジエリアになるので、将来は物流用途にも活かされるだろう。
■レジェンドのレベル3は活かされず!
オリジンが想定する自動運転レベルは4。限定された条件下で車両がすべての運転操作を担うレベルだ。日本ではすでに福井県の永平寺町で電動カートを使ったレベル4自動運転が実施されているが、オリジンは運転席もハンドルもないため、さらなる法整備なども必要になってくるという。
またレベル4自動運転となると、車両を遠隔監視する仕組みも必要となる。ホンダが2026年から予定している東京都内での実証実験にも、この遠隔監視の仕組みが必要になるわけだが、すでにホンダは国際自動車、帝都自動車交通というタクシー会社と合意書を締結しており、これらのタクシー会社と共同で監視体制を立ち上げるものと予想する。
すでにオリジンはアメリカのカリフォルニアでおよそ800万マイルという走行実績を持つが、あちらの国が右側通行なのに対し日本は左側通行。
この問題に対してホンダは、シミュレーションでかなりの問題に対応できると話すが、先行してテストを行っている宇都宮周辺のテスト走行からも、多くの知見を得ているはずだ。
ホンダの自動運転といえばレジェンドによる日本初のレベル3が記憶に新しいが、このオリジンによる取り組みはまったく別モノで、レジェンドのノウハウは共有されていないとのこと。オリジンで使われるシステムはクルーズに帰属するものであり、将来的にもオリジンのデータがホンダの乗用車に使われることはないそうだ。
オリジンのバッテリー容量やモーター出力などは不明。ただし一般的なタクシーの1日の航続距離は十分にクリアしているそうだ。なおバッテリー残量が一定値を下回ると、自動で車庫に戻る機能が備わっているという。
東京の風景を一変させそうなクルーズ オリジンだが、本国アメリカでは思わぬニュースも飛び込んできた。他車が起こした人身事故の被害者を巻き込んでしまうという事故を起こし、クルーズによる全米での無人タクシーサービスが停止してしまったのだ。
このニュースが日本にどんな影響を及ぼすかは未定だが、自動運転にはまだまだ乗り越えねばならない壁がありそう。その壁を乗り越えて、ユーザーが安心して利用できる自動運転サービスを実現してほしい。
【画像ギャラリー】最大で500台が東京を走るクルーズオリジンのディテールをじっくり見よ!(11枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方