プリウスとの接戦の末、今年のイヤー・カーに選ばれたスバル インプレッサスポーツ/G4。
日本カー・オブ・ザ・イヤーの受賞理由によれば、新プラットフォームによる質の高い走り、国産車初の歩行者保護エアバッグを標準装備するなどの世界トップレベルの安全性能、200万円を切る手頃な価格などが高く評価されている。
本記事では、インプレッサを実際に使ってみた4人の自動車評論家の意見をまとめてみる。
ベストカー2016年12月10日号
乗り心地はライバルたちを凌いでいる
メカにうるさい自動車評論家・鈴木直也氏
新型インプレッサに乗って、まず誰もが感銘を受けるのが乗り心地の上質さだ。もちろん、それは単純にバネがソフトであるとか当たりが柔らかいといったレベルの話ではない。
欧州プレミアムカーなどに乗った経験があればおわかりいただけると思うが、大小さまざまな路面入力を受け止めながらバネ上がビシッと揺るがない骨太な剛性感。あの感覚についにCセグ国産車が到達した。今度のインプレッサの乗り心地にはそういう驚きと感動がある。
路面の継ぎ目などを通過した時のダンピングのおさまり感。並のクルマだとドシン・ブルブルとくるところで、タンッ・スッと一発でおさまる気持ちよさは、日常ドライビングのクォリティを大きく高めてくれている。
こういった乗り心地性能では、国産Cセグではこれまでアクセラの評価が高かったが、インプレッサはそれを凌駕したといっていいレベル。特に市街地領域ではソフトな乗り味の17インチ仕様が快適で、200万円台でよくぞこの上質な乗り味を実現したと、脱帽するほかない。
市街地レベルの乗り心地では、ゴルフVIIやボルボV40と比較してもインプレッサのしなやかな味わいが魅力的だ。
ハンドリング、トルクベクタリングの評価は?
愛車の1台はWRX S4の国沢光宏氏
新型インプレッサの評価が驚くほど高い。
実際、ハンドルを握ってみると「すばらしいね!」と思う。絶対的なシャシーの性能からして従来型よりカンペキにワンランク上がっている感じ。
こう書くと「コーナリング性能ってタイヤの性能とサスペンションのセッティングで決まるのでは?」と思うことだろう。私もそう考えていた次第。
けれど車体の姿勢により接地荷重やアライメントは常時変化し続ける。入念なシャシー設計をすればタイヤの性能を引き出せるそうな。
さらに今回18インチ仕様にアクティブトルクベクタリングを採用してきた。すでにレヴォーグから採用していたのだけれど、コーナーでアンダーステアが出た際、前輪の内側のブレーキを少しツマむことでトルクベクタリング効果を出そうという狙いである。
具体的には、コーナーのアンダーを減らすもの。すでに横滑り防止装置に組み込まれている制御だからして、それほど目新しくない。レヴォーグの場合も大きな話題にならなかったほど。
新型インプレッサのアクティブトルクベクタリングもまったく同じ。
考え方としてはS660などに採用されている「アジャイルハンドリングアシスト」と同じでハンドルを切ってコーナーに進入したら、イン側のブレーキだけツマむ。これで一気に曲がろうという挙動になるから面白い。
優れたシャシー性能を持つ新型インプレッサとの相性は抜群によく、フロントが軽くなったような挙動になる。
新型インプレッサの質感、室内の居住性はライバル車を圧倒
モータージャーナリストの諸星陽一氏
新型インプレッサ、ボディが新プラットフォームなら、シートも新プラットフォームだ。
シートは表皮のみの変更ではなく、内部構造から一新された。腰に小さな爆弾を抱えている私は、素性の悪いシートに座ると10分かそこいらで爆弾センサーが反応するが、インプレッサは2時間にわたるドライブでも腰はヒクヒクしなかった。
シートの表皮やドアトリムの質感も高い。
光沢を抑えたメッキパーツや適度なコントラストを持つツートーンのシート表皮などアクセントの使い方も上品で好感が持て、高級感がある。
直線部分が多く、カドがとがった印象があるのはいわゆるガンダム系で現代的なのだろうが、見ているうちにさほど気にならなくなる。
Cセグメントの最新モデルであるインプレッサは、ライバルを徹底的に研究しつつ、コストとオリジナリティのなかで苦悩しながらクルマを作りあげた。現状最も新しいCセグがインプレッサといえる。
先代ではライバルにひけを取っていた居住性の面でも、一歩抜きんでた。ライバルとなるマツダのアクセラやVWゴルフなどと比べても充分に広い。
さらにインプレッサスポーツはライバル車と比べてワゴン寄りのパッケージングなので、ラゲッジスペースも広くなっていることも見逃せない部分。
まだ1.6Lのベーシックグレードは試乗していないのでなんともいえないが、192万2400~259万2000円の価格帯を考えればかなりのバリューを持っているといえる。
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