マツダCX-8は、SUVでありながら3列のシートを装着する。プレマシーとビアンテの生産終了を控えた時期に登場したこともあり、このモデルはミニバンの後継車種とも受け取られる。
しかし、クルマの性格は「いわゆるミニバン」とは大きく異なっており、CX-8が従来のプレマシーやビアンテの需要をそのまま引き継ぐことは困難だ。
以下、その理由とCX-8の「本当の狙い」や価値を考察してみたい。
文:渡辺陽一郎 写真:平野学
■3列目はフリードなどと同程度
まず今回発表されたマツダCX-8と、年内に生産終了するビアンテやプレマシーとでは、価格差が開きすぎている。プレマシーは値引きを含めると190万円前後で売られるが、CX-8は350万~400万円が売れ筋で、総支払い額は約2倍に達する。
3列目の居住性は、CX-8では床面が燃料タンクのために高いから、床と座面の間隔が不足して座ると膝が持ち上がる。3列目に座る乗員の大腿部が座面から離れてしまう。
2列目を前側にスライドさせると足元空間はプレマシーよりも広くなるのだが、快適な3列目シートとまでは言えない。
特に全高が1700mmを上回る「ボックス型ミニバン」に比べると、(室内の広さに関しては)CX-8は不利が際立つ。
ボディは大柄なのに、3列目の居住性はコンパクトなフリードと同程度だ。セレナやヴォクシーなどのミドルサイズ、ヴェルファイアなどのLサイズに比べると明らかに見劣りする。
居住性に大差が生じる理由は3列目の床面形状だ。ボックス型ミニバンは燃料タンクをカバーできる位置に床面を設定して、3列目までフラットに仕上げたから、CX-8と違って膝が持ち上がらない。
ボックス型ミニバンは車両の作り方が根本的に異なり、3列目まで快適に座れる。
■4名程度で乗るなら大満足
ただし、ヴェルファイアのような上級ミニバンは多人数乗車ではなく、4名が快適に移動する目的で選ばれることも多い。つまり、2列目を後方にスライドさせ、オットマンを使いながら、足をゆったりと前に伸ばして座るような用途だ。
CX-8は3列目を使った多人数乗車には適さないが、4名が快適に乗車するニーズには合う。
特に最上級のXD Lパッケージは、2列目の中央に立派なアームレスト付きコンソールボックスを備え、レクサスLSのロングボディに設定されたエグゼクティブパッケージに似ている。
CX-8に身長170cmの大人4名が乗車した場合、2列目を後端までスライドさせると、乗員の膝先空間は握りコブシ3つぶんに達する。
SUVの2列目シート(後席)では最大級の広さになり、コンソールボックスと相まって実に快適だ。居住性はヴェルファイアに近い。
「大人4名が快適に乗車できるクルマに乗りたいが、実用重視のミニバン、保守的なセダンは好みに合わない」と考えるユーザーもいる。
CX-8はこのニーズにピッタリだ。1列/2列目シートはヴェルファイアなどLサイズミニバン並みに快適で、3列目はミニバンに比べると狭く荷室容量も小さいが、外観はスポーティでカッコイイ。
さらに走行安定性は、ミニバンよりもSUVが優れている。内外装のデザインや走りまで含めた総合的な魅力では、CX-8はヴェルファイアなど同じ価格帯の上級ミニバンに見劣りしない。
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