いま欧州市場で最も売れているSUVである、「ルノー キャプチャー」。欧州では、すでに2019年より発売されていた新型モデルが、2021年2月25日、いよいよ日本でも発売開始となった。
日本仕様のパワートレインは、最大出力154ps/最大トルク27.5kgmのスペックを誇る、1.3L直4ガソリンターボエンジンと7速DCTの組み合わせ、一本のみ。
しかし実は、欧州市場では、「E-TECH」というプラグインハイブリッド(PHEV)も用意されている。
本稿では、注目のPHEVがどのようなユニットなのか、そして、日産・三菱へのE-TECHの展開はありえるのか? について迫ってみたい。
文/吉川賢一 写真/RENAULT、MITSUBISHI
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フルハイブリッドにもPHEVにもなるルノー謹製「E-TECH」とは?
まず「E-TECH」という名前の意味するところについて、説明する必要がある。
現在、欧州市場で販売されているキャプチャーと、同社のメガーヌスポーツツアラーには、「充電式のハイブリッド」バージョン、つまりPHEVのE-TECHが提供されるが、Bセグメントのコンパクトカー「クリオ(日本名ルーテシア)」においては「フルハイブリッド」バージョンのE-TECHが提供されている。
つまり、ルノーの「E-TECH」とは、フルハイブリッドとPHEVの、どちらにも変化できる、バイリンガルなパワートレインといえる。
Bセグメントコンパクトハッチ(編注:日本車ではヤリス、フィットなどが該当する車格)初のPHEVがあっても面白かったとは思うが、さすがにクリオにPHEVは贅沢、という判断でハイブリッドになったのかもしれない。
ともかく、セグメントごとに顧客の需要に合致するように、コストを調節したパワートレインを採用できる、という意味では、非常に便利なハイブリッドシステムだ。
現時点は、この3車種のみ、E-TECHを採用したモデルが欧州市場で販売されているのだが、今後はメガーヌなどへも順次拡大されていくことだろう。
ルノーE-TECHはワンペダルドライブも可能な2モーターハイブリッド
E-TECHは、1.6L直4ガソリンエンジンと2つの電気モーターがベースとなる。クリオE-TECHハイブリッドも、この排気量のパワートレインを搭載している。
キャプチャーE-TECHプラグインハイブリッドでは、さらに充電容量9.8kWh(400V)の動力用バッテリーを備えており、電力だけで最大31マイル(約50km)を走る。
ちなみに、2020年11月に発売された三菱 エクリプスクロスPHEVの総電力量は13.8kWh、EV走行距離は65kmだったので、E-TECHの電気走行距離はまずまず、といえる。
また、E-TECHプラグインハイブリッドの最高出力は160ps、最大トルクはエンジン分が144Nm、電気モーター分が205Nmの、合計349Nmの出力となる。
ひと昔前のV6エンジンや2Lクラスのディーゼルエンジンと同程度の最大トルクであり、加速は相当いいはずだ。ちなみに、0-62mph(0-100km/h)は10.1秒、最高速度は電気モードで84mph(135km/h)にもなるので、高速巡行も、電力のみでそこそこ耐えられるだろう。
なにより、CO2排出量は34g/km、燃費は1.5L/100km、計算上だと66km/Lオーバーを誇る。これまでルノーには、ZOEやカングーなどのEV車はあったが、主力車種にフルハイブリッドモデルやPHEVがなかった。
ようやく浸透が始まったE-TECHは、ルノーにとって強力な武器だ。アクセルワークと加減速とがダイレクトになるワンペダルドライブも可能であり、マニュアルトランスミッションでガシガシ走るのが好きな欧州のドライバーにも、大いに受け入れられるだろう。