2019年10月の日本国内における登録車販売台数1位は、カローラシリーズであった。
カローラスポーツや継続生産されるカローラアクシオ/フィールダーを含めたシリーズ全体で1万1190台を登録している。
カローラが販売台数No.1に躍り出るのは11年振りのことだが、実はそのなかで最も売れているのは王道のセダンではなくワゴンの「カローラツーリング」。
近年、ワゴンの人気は低迷し、数多くの国産ワゴンが消滅するなか、なぜカローラツーリングは人気を集めているのだろうか。その背景に迫る。
文:渡辺陽一郎
写真:編集部、TOYOTA
【画像ギャラリー】後席はちょっと狭め!? 新型カローラツーリング
新型カローラは7割がツーリング! 「セダンよりワゴン」な理由は?
カローラの商品開発担当者によると、新型になったカローラセダンとワゴンのツーリングでは、販売比率が30:70になるという。理由を尋ねると以下のように説明した。
「カローラセダンでは、営業車などに使う法人のお客様が約50%を占めています。この比率は、先代セダンのアクシオでも、3ナンバーサイズになった新型でもほとんど同じです。
そして法人のお客様は、社内的な規定で5ナンバー車しか購入できない場合もあるため、3ナンバー車になった新型カローラセダンの売れ行きは伸び悩む傾向にあります。
また、従来型カローラアクシオでは、お客様の平均年齢が70歳に達していました。そのために3ナンバーサイズになってディスプレイオーディオを標準装着した新型セダンは、馴染みにくい面もあるでしょう。
それにしてもクルマの実力を考えると、もう少し売れて良いと思います」
カローラが3ナンバー車になったのは確かだが、全長は4500mm以下に収まり、全幅も1745mmだから、今でもセダン&ワゴンでは小さな部類に属する。
ノーマルエンジンのCVT(無段変速AT)仕様には、コスト低減可能な直列4気筒1.8Lを搭載して、緊急自動ブレーキ、運転支援機能、サイド&カーテンエアバッグなどを標準装着しながら、価格を割安に抑えた。
そして、プラットフォームの刷新により、走行安定性と乗り心地を大幅に向上させている。3ナンバー車の不利をカバーすべく、工夫を凝らしたわけだ。この点を踏まえると「もう少し売れて良い」という商品開発担当者の思いも納得できる。
理想をいえば、新型ヤリスの上級に位置する5ナンバーサイズのプラットフォームを新開発して、プレミアムなコンパクトセダン&ワゴンを目指して欲しかったが、3ナンバー車とはいえ使いやすく仕上げた。
実は競合少ない? カローラツーリング人気の背景に国産ワゴンの現状
セダンよりもツーリングの売れ行きが約2倍と多い背景には、国産セダンとワゴンの車種ラインナップも関係している。
コンパクト&ミドルサイズのセダンは、インプレッサ G4、マツダ3セダン、シルフィ、グレイス、設計は古くなったがプレミオ&アリオンなども選べる。
しかし、ワゴンは圧倒的に少ない。カローラを除くと、Lサイズのマツダ6ワゴン、ミドルサイズのレヴォーグ、コンパクトな5ナンバーサイズのシャトルだけだ。
このうち、マツダ6はボディが大きいうえに、売れ筋価格帯も350~400万円に達する。レヴォーグも300万円以上で、今は1.6Lターボを搭載する「1.6STIスポーツアイサイト」の人気が高い。この価格は363万円だ。
シャトルは割安で、ノーマルエンジンの「G ホンダセンシング」は180万8400円、「ハイブリッドX ホンダセンシング」でも241万8900円だが、フィットをベースに開発されたから外観のワゴンらしさが乏しい。
後席と荷室は3ナンバーサイズのカローラツーリングよりも広いが、外観がズングリしていて、ミニバンやハイトワゴン風に見えてしまう。
そうなるとワゴンらしい車種としては、カローラツーリングの買い得感が際立つ。1.8Lエンジンを搭載して装備も充実させながら、「S」の価格を221万6500円に抑えたからだ。
レヴォーグで価格が最も安い「1.6GTアイサイト」と比べて70万円、フォルクスワーゲン ゴルフヴァリアント「1.2TSIコンフォートライン」に対しては80万円、マツダ6ワゴンにクリーンディーゼルを搭載した「XDプロアクティブ」と比較すれば130万円ほど安い。
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