現在はファミリーカーの定番となっているミニバン。その先駆けと言えるのが、2BOXボディに3列シートを搭載した、三菱シャリオである。見た目はオンロードの得意なクルマのように見えるが、その走行性は多少のオフロードはお手の物という実力を備えたクルマなのだ。ハイウェイ経由アウトドアフィールド行きの、初代シャリオを振り返っていこう。
文:佐々木 亘/画像:三菱自動車
【画像ギャラリー】3列シートでどこでも走る!! 三菱が誇る走行性能 (20枚)画像ギャラリー昭和の時代のクロスオーバー
1983年に登場した初代シャリオ。顔だけのミッキーマウスが登場する、ちょっと変わったCMを覚えているおじさま方も多いのではないだろうか。
ボディサイズは全長4295mm~4485mm×全幅1645mm×全高1525mm~1580mmというそこまで大きいとは言えないボディだが、2×3×2のシートを備える7人乗りを実現した。
室内は適度に広く、ホールド性の高い座り心地の良いシートは、上質なセダンのような仕上がりだ。シートはフルフラットになり、使い勝手も良い。
現代でいうフリード・クロスターのような立ち位置のクルマなのだが、その中身を見ていくと、超本格的なメカニズムに大変驚かされる。
【画像ギャラリー】3列シートでどこでも走る!! 三菱が誇る走行性能 (20枚)画像ギャラリー本気の4WDに重厚なボディや足回り
オフロードはもちろんオンロードにも強いのがシャリオの4WDだ。力強い駆動力はもちろんのこと、旋回時の安定性や制動時安定性にも寄与している。
またこの4WDをパートタイムにしているのもシャリオの凄いところ。シフト横のスーパーシフト上部にスイッチがあり、いつでもドライバーの意思で二駆と四駆を切り換えられる。また、スーパーシフトはローレンジとハイレンジを切り換えられるオフロードもお任せな装備。搭載される4速トランスミッションは、スーパーシフトを組み合わせることでロー側の4速とハイ側の4速で、合計8速あるような使い方ができるのだ。
フロントサスペンションにはストラット式独立懸架を採用し、リアには、トーションバー式セミトレーリング独立懸架サスペンションを備える。加えてリアサスには減衰力可変式のショックアブソーバーを採用した。
快適な乗り心地と高い走行安定性を両立させる足回りと駆動系は、シャリオが他のワゴンやバンとは一線を画すところ。道を選ばずどこまでもいけるその実力は、現代で言うデリカD:5のようだ。
【画像ギャラリー】3列シートでどこでも走る!! 三菱が誇る走行性能 (20枚)画像ギャラリー車両姿勢を常にドライバーへ伝える工夫
シャリオのインパネ中央上部には、デジタル時計と傾斜計が備わる。一般的なクルマには見かけない傾斜計は、シャリオというクルマが多彩なフィールドで走るために必要なメーターの一つなのだ。
傾斜計は、車両のピッチング方向とロール方向の傾きをわかりやすく表示してくれるものだ。本格クロスカントリーモデルには搭載されていることはあるが、3列7人乗りのクルマに搭載されることは少ない。
またメーターに目を移すと、駆動方式と副変速機のロー・ハイがドの状態にあるのかが、一目瞭然だ。こうした装備だけを見ていくと、パジェロに乗っているかという錯覚すら起きてくる。
1991年に登場する2代目モデルは、世界最速の7人乗りと言われるほどのオンロード向けモデルになり、走りのシャリオは引き継がれた。以降はシャリオグランディス、グランディスという王道ミニバンに変化して、シャリオの名は消滅することとなる。
今から約40年前に生まれた、副変速機付き4WDを搭載した7人乗りMPVは、三菱に大革命を巻き起こした。その名残は、現在ミニバンの中でも唯一無二の存在とも言えるデリカD:5へ引き継がれている。
三菱の魅力は、やはりステージを選ばない走行性能にある。デリカD:5やトライトン以外に、セダンやコンパクトモデルでも本気の三菱の走りを体感できるモデルが増えてくれることを願いたい。
【画像ギャラリー】3列シートでどこでも走る!! 三菱が誇る走行性能 (20枚)画像ギャラリー
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