■ハスラーに挑むタフト 何が強みとなるのか?
そこで新型ハスラーに向けた新たな刺客として送り込まれるのがタフトだ。販売店によると「発売は2020年の7~8月で、予約受注は6月頃に開始する」という。
「東京オートサロン2020」に出展されたタフトのプロトタイプを見ると、水平基調のボディ、ホイールアーチやボディの下まわりに装着されたクラッディング(黒い樹脂パーツ)などがハスラーに似ている。
中央のピラー(柱)を太く見せるようなリヤ側のドアパネルは、ワゴンRにソックリだ。ダイハツがかつて用意していたネイキッドに似た印象も受けるが、多くのユーザーはハスラーの後追い商品と受け取るだろう。キャストのように競争を避ける配慮はせず、ハスラーのライバルであることをストレートに表現している。
これは今の軽自動車に多いパターンだ。N-BOXカスタム、タントカスタム、スペーシアカスタムなどは、グレード名もデザインもほぼ同じだ。標準ボディは個性を演出しているが、エアロパーツを装着したカスタムは、どれも見分けが付きにくい。ユーザーの求めるデザインが統一されており、各車とも似てくるわけだ。真似をしたというより、同じユーザーをターゲットに開発された結果だろう。それでもユーザーの側から見れば、後発モデルは真似をしたと受け取られてしまう。
大切なことは、機能でどれだけ個性を発揮できるかだ。東京オートサロンに出展されたタフトを見る限り、ハスラーと明確に異なるのはガラスルーフ程度になる。荷室や後席の背面に汚れを落としやすい素材を使っているのは、ハスラーも同じだ。
そしてプロトタイプを見る限り、タフトに後席のスライド機能はなさそうだ。後席の背もたれを前側に倒した時、座面が連動して下がり、床面の低いフラットな荷室にアレンジする機能も見当たらない。
ちなみにハスラーは、先代型を含めて、後席のスライドと背もたれに連動した昇降機能を左右独立式で備えている。ダイハツのタントにも同様の機能があるから、タフトに装着することも可能だと思われるが、プロトタイプを見る限り備わっていない。そうなると荷室の使い勝手とシートアレンジは、すでにハスラーに負けている可能性が高い。
収納設備もハスラーは助手席の前側に、上から縦方向にアッパーボックス、トレイ、グローブボックスを並べた。タフトはトレイとグローブボックスのみだからシンプルだ。
パーキングブレーキはタフトが注目される。ハスラーやタントは足踏み式だが、タフトのプロトタイプは電動式だ。軽自動車の電動パーキングブレーキは、今ではデイズやN-WGNも採用するから珍しくないが、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールの機能を向上できる。全車速追従型で追従停車した場合、ハスラーやタントは停車後約2秒を経過すると勝手に再発進するが、タフトは電動パーキングブレーキに自動的に切り替えて追従停車を続けられる。
ただしこの優位性では、ハスラーに追い付かれる可能性も高い。タフトをハスラーに向けた刺客とするには、ハスラーの購入を考えているユーザーに、「これならタフトのほうがいい」と思わせる魅力を与えねばならない。
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