登場前から注目を集めていたトヨタの大型ミニバン「グランエース」が、2019年11月25日に発売された。Lサイズミニバンとして人気の「アルファード/ヴェルファイア」もあるが、それを超えるド迫力のサイズとなっている。
全長は5300mm、全幅1970mm、全高も1990mmに達するから、試乗会で隣り合って展示されていたアルファードが、まるでヴォクシーのように小さく見えるくらいだ。
そんなグランエースだが、トヨタが明らかにした初期受注台数は2020年1月末までの約1カ月間で950台。年間の販売計画台数(600台)を上回るペースとなっている。
さて、そんなに好調と聞くと「いったいどんな人が購入しているのか?」が気になるところだ。今回は販売の現場を取材し、グランエースの販売現場での評判や、販売状況について取材した。
文/遠藤徹
写真/編集部
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■受注は好調! でも現場ではまだ1台も売れてない!!?
トヨタが2019年11月25日に発表、発売した大型ミニバンの「グランエース」は、その後どのようなマーケット評価になっているのだろうか。
日本自動車販売協会連合会(自販連)が発表している「乗用車ブランド通称名別順位」では、2019年12月:40台、2020年1月:101台という登録実績だった。これをどう見るかで肯定的にも、否定的にも評価できる。
扱い店は全国のトヨタ全系列店であるが、「評価を下すには時期尚早」といえそうである。全国275社、4615店、約5万人の営業マンの一部ではあるが話を聞くと、まだ大部分の店舗や営業マンは発売以来1台も売っていないのが現実のようだ。
販売店が、宣伝用のデモカーとして1台ずつ自社登録しただけで合計275台になってしまうから、これだけの台数だと、ほとんど一般のユーザーには渡っていないと考えられる。
首都圏にある全系列店の営業担当者にコメントを求めると、「クルマとしての出来はよいかもしれないが、一般のユーザーが自分で運転を楽しむ乗り物ではない。高級ホテル、高級旅館が旅行で訪れるお客さんを送迎するために使う、運転手付きの車両だ」と受け止めているのが現実である。
そのためにトヨタ系列店のどこの店舗を回っても、展示車を置いているわけではなく、各地区で1台あればいいほうで、ゼロの地区もある。試乗車はほとんどないのでハンドルを握ってから購入するというわけにはいかない。トヨタ系列店のどこでも、購入の受け付けをしているが、2020年3月上旬現在の納期は4カ月待ちの7月中旬以降となっている。量産モデルではないので常時作っているのではなく、受注がある程度たまった時点で組み立てて納車する方式としている。
グレードは、3列シート6人乗りの「プレミアム」(650万円)と4列シート8人乗りの「G」(620万円)とふたつある。現時点では4列シートの引き合いが圧倒的に多い。8人乗りは観光地での送迎用、6人乗りは企業のVIPがクルマで移動中でも、社内と同じように事務作業ができるように想定したつくりになっている。とはいえ、まだどちらも少数という状況にある。
エンジンは、クリーンディーゼルの2.8Lターボで2WDのみのラインアップだが、これは使用を想定した地域の登坂路や、走行距離の長さを配慮しての対応のためと思われる。
ボディサイズは全長5300×全幅1970×全高1990mm、最小回転半径5.6mであるから、都市部での一般家庭の車庫や駐車場では出し入れがしにくいケースがあるだろう。狭い道路での運転も難しいので、その点も普及の壁になるといえる。
グランエースの買い方はほかの量販モデルと同じで、カタログによる営業マンとの交渉で進められる。基本的には車両本体からの値引きはゼロで、10万円程度の用品、付属品サービスのみの場合がほとんどである。トヨタ全系列店扱いだから、他系列店との競合はできないこともないが、営業マンが積極的に売り込む性質の車種ではないので、値引きを要求しても乗ってくる確率は少ないと考えてよい。
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