クルマの使用環境はさまざまであるが、その中にはシビアコンディションと呼ばれる文字どおり「厳しい使われ方」もある。
シビアコンディションが該当する使い方には意外にも、「(俗にチョイ乗りと呼ばれる)短距離の走行が多い」というのも含まれる。
クルマの利用目的には地域を問わず「近所に行くアシとして使うのがほとんど」とか「エンジンをかけた後はすぐ次の目的地を目指す配送用」という場合も少なくないだけに、チョリ乗りを行うことによるクルマへの弊害や対策は知っておきたい知識だ。
文:永田恵一/写真:HONDA、平野学、池之平昌信、Adobe Stock
【画像ギャラリー】あなたはいくつ当てはまる? シビアコンディションの恐怖!!
シビアコンディションとは?
シビアコンディションに該当する使われ方はクルマに付属するメンテナンスノート(整備手帳)などに記載されており、ここではトヨタ車を例に挙げると以下のような事例が紹介されている。
(1)悪路(凹凸路、砂利道、雪道、未舗装路)での走行が走行距離の30%以上ある
具体的には運転者が体に突き上げなどの衝撃を感じる荒れた路面、石を跳ね上げたり、わだち等により下廻りが当たる機会が多い路面、ホコリの多い路面を指す。
(2)走行距離が多い
過走行と言われる目安としては年2万km以上だ。
(3)山道、登坂路の頻繁な走行
具体的には上り下りが多く、ブレーキの使用回数が多い場合。目安としては走行距離の30%以上が該当するケース。
(4)短距距離走行の繰り返し
1回の走行距離が短く、水温などの各部の温度が低い状態での走行が多い走り方をする場合。目安としては1回あたりの走行距離が8km以下が該当する。
(5)長時間のアイドリングが多い
目安としては1日のアイドリングでの累積時間が2時間程度。
(7)1回の運転で低速での走行頻度が多い(ディーゼル車は除く)
目安としては1日で10~15km/hでの走行距離が30km程度ある。
(8)高地走行が多い(ディーゼル車のみ)
標高2000m以上の高地での走行頻度が多い場合。目安としては走行距離の30%以上。
というように、前半のいかにもクルマへの負担が大きそうな使い方に加え、後半にはチョイ乗りやチョイ乗りに近い使われ方も含まれている。
なおシビアコンディションが該当する使われ方は日本車であればどのメーカーでも概ね共通だ。
チョイ乗りがなぜシビアコンディションに該当するのか?
クルマに負荷がかかってないように思えるチョイ乗りだが、シビアコンディションと言われる理由を挙げると以下のようになる。
■冷却水や各部のオイルなどが適温まで上がらない
クルマを構成する部品が動く際にはすべてに適温があり、冷却水やエンジンオイルであれば80~90℃といったところだ。
冷却水が適温まで暖まらないとエンジン内部が熱膨張を考慮した適正なクリアランス(隙間)にならない、エンジンオイルなら適温になるまでに出る水分が蒸発せずエンジンオイルの劣化が進みやすいといった弊害がある。
■ストップ&ゴーが多いことによる負担増
これはチョイ乗りというより街乗りといったほうが正しいが、発進と停止を繰り返すストップ&ゴーが多いとブレーキやエンジンルーム内の熱が抜けにくいことなどにより、クルマへの負担は大きい。
といったことが挙げられる。
そのため同じような年式の同車種で、「チョイ乗りばかりで走行距離が短いクルマ」と「高速道路での使用が多かったので過走行」というクルマがあったら、後者のほうが調子はいいということも珍しくないのだ。
人間ならチョイ乗りはイライラの溜まるデスクワーク、高速道路はノビノビと体を動かす運動と例えられ、ストレスが少ないのはどちらかは明白だろう。
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