2代目ジュークではなく、新型キックスを導入するワケ
その1「大きさと価格」
2代目ジュークのサイズは、キックスよりも幅広くて短い。ライバルとなるヴェゼルよりも40ミリ広く、C-HRよりも5ミリ広い程度ではあるが、1800ミリという大台にのっているため、ライバルたちよりもちょっと大きく感じられてしまう。
コンパクトSUVを求める日本人のユーザーには、キックスのほうが、より適していると考えられるのだ。
さらに、キックスは、南米やアジア、北米など、世界各国で販売されているため、世界の数か所の生産工場でつくられており、日本から比較的近いタイにも生産工場がある。
しかし、2代目ジュークは現在のところ、欧州のみでの販売のため、生産工場はイギリスのサンダーランド工場のみ。
直線距離で約900キロのタイと、約9000キロのイギリス、完成車は海上輸送なので実際の移動距離はもっと伸びるが、ロジスティックスは当然、タイの方が近く、納期も輸送コストもはるかに抑えられる。
そのため、新型キックスと2代目ジューク、似たようなサイズ感と装備だとしても、日本市場での販売価格は、おそらく10~15万円ほどの価格差がついてしまうのだ。
もちろん、初代ジュークは、日本の追浜工場で生産されていたので、そこへ製造ラインをつくることはできたであろうが、新型車に合わせて製造ラインを一本構築するのには、非常に大きな投資が必要であり、今の日産には困難であったのだろう。
ジュークは、より販売が見込める欧州に生産工場をおき、タイでつくったキックスを日本へ輸入するのが、いちばんコスパがいい、と日産は判断したと思われる。
その2「デザイン」
時が定かではないが、筆者はとある現場で、ボディに偽装をした初代ジュークの最終実験車を目にしていた。当時は、どう見てもカッコいいとは思えなかった。
前後が短く、背が高く、タイヤもアンバランスに大きい。「デザイナーの暴走、どうしてあんなのが出てきたのだ」と同僚と話していたのを思い出す。
正直なところ、筆者レベルのデザイン感度だと、売れるとは思っていなかった。しかし、デビューするや否や世界中で大ヒット。
「キモカワ」、「ブサカワ」など、散々言われていたが、かえってあの「癖の強さ」がウケけたのかもしれない(筆者の父も、知らぬ間にジュークターボを買っていた…)。
初代ジュークのヒットは、ライバルが誰もいなかったときに、あのチャレンジングなデザインで出したことが、見事にはまったのだろう。
だが今や、ライバルとなるホンダヴェゼルやトヨタC-HR、そして、ヤリスクロスやライズなど、魅力的なデザインのコンパクトSUVが多くおり、事情が違う。クセの強いデザインは、ヒットは早いが、飽きられるのも早い。
デザインでアドバンテージを持つ2代目ジュークは、「出せば」それなりに売れるとは思うが、長く売れ続けるかというと、ちょっと不安があるのだ。
日産としては、よりクセがないデザインで、価格を抑えられるコンパクトSUVを提供したかったのではないだろうか。
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