なぜ新型ヤリスは圧倒的燃費を実現できたのか? HVでリッター40km時代突入!?

ヤリスが圧倒的燃費を実現できた4つの要因

鈴木氏が優れた燃費性能の一因にあげた「ダイナミックフォースエンジン」はヤリスで初採用されたもの。総合的に効率を上げる積み重ねが圧倒的な燃費性能に

 とはいえ、その「あらゆるところを満遍なく」の内容は、詳細に見るとてんこ盛りと言えるほどに密度が濃い。詳しく解説しているとキリがないから主要部分だけを列記しても以下のとおりとなる。

・新設計の3気筒1.5L“ダイナミックフォースエンジン”M15A型を搭載。RAV4の2L版とボア・ストローク(80.5mm×97.6mm)を共用する新世代のエンジンで、熱効率41%を達成している。

・モーター/ジェネレーターを小型・高回転化した新型ハイブリッドトランスアクスルを採用。現行プリウスからの2軸構造は踏襲するものの、コンパクトカー向けに完全新設計。モーター出力と伝達効率はともに約30%向上し、システム出力も16%向上している。

・インバーター用のパワートランジスタとして逆導通型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(RC-IGBT)を採用。小型化に貢献するとともに、ハイブリッドシステム全体の効率アップに寄与している。

・ハイブリッドバッテリーにリチウムイオン電池を採用。信頼性とコストを重視してトヨタは長年ニッケル水素バッテリーを使ってきたが、今回ついにセルベースから新開発したリチウムイオンに転換。充電能力は従来比で約2倍となり、エネルギー回生の能力が大きく向上している。

 もちろん、これ以外にもエンジン内部のフリクション対策や、エアコンなど補機類の効率アップ、空気抵抗、走行抵抗の低減など、いわゆる定番メニューにも地道な改善が続けられており、その総合的な成果が新型ヤリスの優れた燃費に結実しているというわけだ。

新型ヤリスのCO2排出量はEVに迫る

歴代プリウス。1999年誕生の初代で「THS」を搭載して以来、2代目で「THS II」へ、3代目ではリダクション機構が付くなどHVは進化。成熟期へ入ったかに思えたが、まだまだポテンシャルを秘める

 それにしても、筆者のイメージとしてはTHS-IIはもうカラカラに乾いたタオルだと思っていたのに、そこから旧ヴィッツ比2割アップの燃費を絞り出すんだから技術者の執念というのはすごい。

 世間では「内燃機関はオワコン。これからはEVに投資すべき」と浅薄なことを言う人が少なくないが、現実には発電所からもCO2が出ているのを忘れちゃいけない。

 それを加味した視点(ウェル・トゥ・ホイール)で見ると、新型ヤリスのCO2排出量(燃費性能)はEVに迫る水準まで来ているわけで、ある種の“ゲームチェンジャー”となる可能性すら秘めている。

 初代インサイトから約20年を経たヤリスの進化に驚いたわけだが、これからの20年はどうだろう? 筆者は内燃機関+ハイブリッドのしぶとさにはまだまだ可能性があるように思えるんだけど、皆さんはどう思いますか?

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