1980年代後半から1990年代初頭にかけて、日産はBe-1、パオ、フィガロ、エスカルゴという「パイクカー4兄弟」を世に送り出した。そのなかの一台、エスカルゴを久しぶりに見た。桑田佳祐氏の最新アルバム『人誑し/ひとたらし』(2026年6月24日発売)の公式ミュージックビデオに出ていたのだ。そこで、エスカルゴはどんなクルマだったのか、中古車市場ではいくらで買えるのか、解説していこう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:日産自動車
一世を風靡したパイクカー4兄弟のうちの一台
1989年1月に発売されたエスカルゴは、Be-1、パオ、フィガロと並ぶ日産パイクカーシリーズの一台である。ベースは当時のサニー系商用車「ADバン」で、商用車の実用性に遊び心あふれるデザインを組み合わせた異色のモデルだった。
車名の「エスカルゴ」はフランス語で「カタツムリ」を意味し、その名の通り丸みを帯びたルーフからリアへ流れるシルエットは、まさに殻を背負ったカタツムリそのもの。直線基調の商用車が当たり前だった時代に、このスタイルは見る人に強烈なインパクトを与えた。
当時の日産は、単なる移動手段ではなく「所有する楽しさ」を提案するクルマづくりを積極的に進めていた。エスカルゴもその象徴であり、実用品であるライトバンをここまで楽しいデザインに仕上げた発想力は、現在見ても驚かされる。
搭載エンジンは1.5L直列4気筒SOHC(E15S型)。最高出力73ps、最大トルク11.6kgmを発生し、トランスミッションは3速ATのみ。スポーツカーではないが、街中をゆったり走るには十分な性能だった。
デザインだけでなく実用性が高い
エスカルゴは見た目ばかりが注目されるが、本来は商用車である。ベースがADバンだけに積載性は高く、荷室はフラットで使いやすい設計となっていた。
リアゲートは大きく跳ね上がるため荷物の積み降ろしがしやすく、後席は折り畳み式を採用。普段は4人乗りとして使いながら、大きな荷物を運ぶこともできた。
さらに荷室側面は店舗のロゴやイラストを描けるようなシンプルなパネル形状となっており、移動販売車やショップカーとして活躍することも想定されていた。オプションでは丸窓も用意され、より個性的なスタイルを楽しめた。
キャンバストップ仕様も設定され、開放感あるドライブを楽しめるのも魅力のひとつ。当時としては非常に自由な発想で作られたクルマだったのである。
現在でもイベントや街中で見かけると、多くの人が振り返るほど存在感は抜群だ。デザインが古くならないという意味では、日本車史に残る名作と言っていいだろう。
今中古車を買うといくらで買える?
発売から35年以上が経過した現在、エスカルゴは完全な希少車となっている。中古車市場でも流通台数は非常に少なく、中古車大手検索サイトのカーセンサーでは2026年7月時点で全国の掲載台数は5台のみとなっている。
価格帯は90万円~179万円、平均価格は約140万3000円。走行距離や修復歴、キャンバストップの有無などで価格差はあるものの、コンディションの良い個体は150万円を超えるケースも珍しくない。
新車当時は商用車ベースの個性派モデルだったが、現在ではコレクターズカーとしての価値も高まりつつある。パーツの入手は年々難しくなっているため、購入する際は整備履歴や錆の状態、キャンバストップの劣化などをしっかり確認したい。
日産はかつて、常識にとらわれない自由な発想で数々の名車を送り出してきた。エスカルゴはその代表作であり、「こんなクルマを本当に市販したのか」と今見ても驚かされる存在である。
近年の日産はSUVや電動車に注力しているが、エスカルゴのような遊び心あふれるモデルが再び誕生すれば、多くのファンを驚かせてくれるはずだ。そんな期待を抱かせる一台なのである。
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