三菱自動車とAIスタートアップのハイランダーズが基本合意を発表。2027年にも京都工場で国産汎用ヒューマノイド『N』の量産を目指していく。ビッグテック勢に対抗すべく、自動車の量産技術と最先端AIを垂直統合して「日本をナンバーワン」へと導く。それは、ものづくりにおける壮大なロマンだった。
文:ベストカー編集部 鈴村朋己/写真:ベストカー編集部
【画像ギャラリー】すごっ!! 人間と同等の動き!! 三菱の工場で働くヒューマノイドロボットが優秀すぎた(6枚)画像ギャラリー毎年90万人減少する日本を救うシンプルな答え
三菱自動車と、東京大学発のAIスタートアップである株式会社Highlanders(以下、ハイランダーズ)が、「人とロボットが共に働く新しい産業基盤の実現」に向けた基本合意書(を締結した。
この協業の目指す終着点は、製造現場における深刻な労働力不足の解消だけではない。世界に冠たる日本の「ものづくり」の基盤を次世代へ引き継ぎ、海外勢のビッグテック企業に正面から立ち向かう。
そして巨大な垂直統合型の産業基盤を日本から生み出すという、壮大なロマンが込められているのだ。
「唐突ですが、今、日本は毎年90万人もの人口が減少しています。東京ドームおよそ18個分のパワーが、毎年この国から失われているのです」。 ハイランダーズの代表取締役CEO、増岡宏哉氏は壇上でそう切り出した。
少子高齢化の波は、製造業のみならず、電気やガスといった社会インフラの現場まで脅かしている。この未曾有の危機に対し、増岡氏の導き出した解決策は極めてシンプルだった。
「パワーが落ちるなら、毎年90万台のロボットを国内で生産し、産業を守ればいい」。しかし、単にロボットを並べるだけでは意味がない。
物理世界を認識して柔軟に動くフィジカルAIの領域において、頭脳となるAIだけ、あるいは身体となるハードウェアだけをバラバラに開発していては、世界をリードするビッグテック勢には太刀打ちできないのだ。
「垂直統合しなければ、100点満点の性能は発揮できません。そして100点と99点の差で勝者が決まってしまうのが、AI時代の残酷な現実なのです」。
だからこそハイランダーズは、最先端のAI開発だけでなく、ハードウェア設計までを自社で行うフルスタック型の強みを活かして、生産と運用の強力なパートナーを求めた。
その呼びかけに応えたのが、三菱自動車だった。かつて増岡氏自身がパジェロを愛用していたことや、三菱自動車の持つ圧倒的な「ものづくりへの信頼性」へのリスペクトが、この2社を結びつける強力なフックとなったのだ。
伝統の三菱「京都製作所・工場」で2027年にも量産開始へ
三菱自動車の加藤隆雄取締役会長兼代表執行役CEOは、「熟練のノウハウの伝承と人手不足への対応に、ロボティクスとフィジカルAIの活用は大変有効です」と、この協業への強い期待感を露わにした。
今回の合意に秘められた最も熱いポイントは、単なる実験室での研究にとどまらず、「リアルな自動車工場での活用」と「量産化」が同時並行で組み込まれている点にある。
協業の舞台となるのは、三菱自動車の伝統ある京都製作所・京都工場だ。同工場内の遊休建屋を活用し、長年培ってきた量産設計、品質保証、耐久・安全設計などのノウハウをフルに注入していく。
なんと2027年の早いタイミングで、ハイランダーズ製ヒューマノイドロボットの量産を開始する計画が進められているというから驚きだ。
これは自動車メーカーとロボット開発企業が量産化で協業するケースとして、世界初の試み。京都工場で製造されたロボットは、順次自社の製造現場へと投入される。
最初の一歩としては、人間が作業するには危険が伴う領域の現場を見極め、データを収集していく。最終段階として「人間ができること」をすべてこなす汎用性を目指し、現場での泥臭い検証を重ねる方針だ。
最先端のロボティクス技術が社内を行き交う光景は、三菱自動車の従業員にとっても「最先端の技術に触れる機会」となり、モチベーションの大幅な向上に繋がっているという。
人間の願いを背負うヒューマノイド「N」
実演も披露され、会場の視線を一身に集めたのが、ハイランダーズが開発した国産汎用ヒューマノイドロボットのプロトタイプ「N」だ。 「日本」「人間」そして人々の「願い」の頭文字をとってのN。、まさに日本の希望を背負う存在である。
Nは、これまでのロボットのように決められた動きをなぞるだけではない。全身の間接制御をAIが司り、1秒間に100回もの行動生成を行いながら、自律してバランスを取り、手作業や会話もこなす。
また、人間のために作られたハサミなどの道具をそのまま使えるよう、指や足の形は徹底的に人間に近づけられている。さらに、背中には最新世代のGPUが実装され、人間が教えた文字の書き方をそのまま真似て学ぶ機能も備わっている。
Nは「動かせば動かすほど、数を増やせば増やすほど、実世界のデータを通じてAIが爆発的に賢くなっていく」という、独自の学習パイプラインを持っているのだ。
「三菱自動車とハイランダーズの2社共同で、この大量生産とAI成長のサイクルを最速で回す。目指すは、再び日本をナンバーワンにすることです」。増岡氏はそう力強く宣言した。
クルマ好きのハートを撃ち抜く、ものづくりのロマン
自動車産業は100年に一度の大変革期を迎え、電動化やソフトウェアファーストへの移行に追われている。
その渦中で三菱自動車が選んだ道は、自らのコアコンピタンスである「極めて堅牢で安全なハードウェアの量産技術」を、ロボティクスという未知の領域へフルスロットルで適応させることだった。
「生きるために仕事をする時代から、人が生きること自体が当たり前になり、人生の意味の本質とじっくり向き合える時代を創りたい」。増岡氏が語ったその未来像は、一見すると壮大すぎる夢物語に聞こえるかもしれない。
しかし、京都工場でロボットが次々と産声を上げる2027年は、もう目の前に迫っている。
2社が巻き起こすスピード感と飽くなきパッション。それは、かつての日本がものづくりに抱いていたワクワク感に近いもの。すなわちクルマ好き、メカ好きのハートを激しく撃ち抜く、熱いエッセンスがそこにはあった。
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