国産車のウインカーレバーは右、輸入車は左。初めて借りた輸入車のレンタカーで思わずワイパーを動かしてしまった経験がある人も多いだろう。この違いはなぜ生まれたのか、日本独自の規格の正体を探る。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部、ヒョンデ
【画像ギャラリー】なぜ国産車はウインカーレバーが右にあるのか? その理由を探る(12枚)画像ギャラリー答えは「JISとISOのケンカ」である
結論から言えば、この違いは日本独自の工業規格「JIS」と、国際的な工業規格「ISO」が異なる基準を定めていることに起因する。JIS(日本工業規格)では、ハンドルの位置にかかわらず「ウインカーは右側、ワイパーは左側」に配置することが標準とされている。一方のISO(国際標準化機構)では、これもハンドルの位置にかかわらず「ウインカーは左側、ワイパーは右側」と正反対の基準を定めている。
国産車の多くはJISに準拠してウインカーを右側に、輸入車の多くはISOに準拠してウインカーを左側に配置している。どちらも法的な強制力を持つ規格ではないが、それぞれのメーカーが自国の標準に従い続けているため、日本国内ではこの2つの規格が事実上「ケンカ」した状態のまま共存し続けているというのが実情だ。
ここで興味深いのは、どちらの規格も「ハンドルの位置にかかわらず」ウインカーの左右を固定している点だ。普通に考えれば、右ハンドル車ならウインカーレバーは右側に、左ハンドル車なら左側にあるほうが、シフト操作とウインカー操作が重なるMT車などでは理にかなっているように思える。実際、右ハンドルの日本車はウインカーが右にあり、この点では合理的な配置になっていると言えよう。
ところがISO規格の輸入車は、日本仕様として右ハンドルに仕立て直しても、ウインカーは左側のまま変わらない。これは左側通行のイギリスのように、右ハンドルが標準の国でも同様で、ISO規格に準拠する限りウインカーは常に左側という決まりが貫かれている。左側通行でありながら、右ハンドルの国産車と左ハンドル・左右混在の輸入車がともに走っている日本の道路事情は、世界的に見てもかなり特殊な状況を生み出しているのだ。
日本車も輸出先ではウインカーが左になる「律儀さ」
ここで気になるのが、日本車を海外へ輸出する場合はどうなるのかという点だ。答えは明快で、日本車メーカーは輸出先の国や地域に合わせてウインカーの左右をきちんと変更している。左側通行のイギリスへ輸出される日本車は、右ハンドルであってもISO規格に沿って左ウインカーになる。逆に日本国内向けの右ハンドル車は、律儀にJIS規格に沿って右ウインカーのまま販売されているのだ。
一方で輸入車メーカーは、日本市場向けにわざわざウインカーレバーを右側に付け替えるということをほとんど行わない。左ハンドル仕様を日本向けに右ハンドルへ変更するコストは負担しても、ウインカーの左右を入れ替えるコストまでは負担しないというのが実態だ。単純な製造コストの問題というより、「ISOという世界標準に従わない日本のためだけに、特別に右ウインカー仕様を作る意味を見いだせない」という考え方が根底にあるとも指摘されている。
近年は「右に寄せる」輸入車も登場している
もっとも、この状況にまったく変化がないわけではない。近年では、ヒョンデの電気自動車「アイオニック5」や、BYDのSUV「ATTO3」など、日本仕様として発売する際にウインカーレバーをわざわざ右側へ移設して発売するメーカーも登場している。日本市場を重視する新興メーカーにとって、こうした細かな使い勝手への配慮は、既存の欧州系輸入車との差別化ポイントになり得る。
また例外的な事例として、トヨタ「スープラ」はBMWと共同開発されオーストリアの工場で生産される関係でウインカーが左側に、逆にフィアット「アバルト124スパイダー」はマツダ「ロードスター」の兄弟車としてマツダの工場で生産される関係でウインカーが右側になるなど、開発体制や生産拠点によって規格をまたぐ変則的な例も存在する。単純に国産車か輸入車かというブランドの区分だけでは、必ずしも判断できないケースもあるということだ。















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