いまや日本の乗用車の大半を占めるAT車。クラッチ操作が不要で運転がラクなのはいいが、普段何気なく行っているシフト操作やブレーキ操作が、実は間違っているかもしれない。信号待ちではDレンジのままが正解? 下り坂でNレンジに入れると燃費がよくなる? 駐車時はPレンジだけで大丈夫? AT車にまつわる疑問や勘違いを徹底検証する!
文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobe Stock(Adobe Stock@あんみつ姫)
信号待ちでDレンジからNレンジに入れるのは間違いなのか?
信号待ちのたびにDレンジからNレンジに入れる。長年AT車に乗っているベテランドライバーなら、こんな操作を習慣にしている人もいるのではないだろうか。
Dレンジに入れたままブレーキを踏んでいると、クルマが前に進もうとするクリープ現象によって、ブレーキを踏み続けなければならない。だったらNレンジに入れたほうがラクだし、ATにも負担がかからないのではないか、という考え方だ。
ところが、信号待ちのたびにDレンジとNレンジを切り替えることが、必ずしもクルマに優しいとは限らない。
一般的なトルクコンバーター式ATは、Dレンジに入れてブレーキを踏み、停止することを想定して設計されている。正常な状態であれば、信号待ちでDレンジのまま停止していても、それだけでATが故障したり、寿命が大幅に縮んだりするわけではない。
むしろ短い信号待ちのたびにNレンジへ切り替え、青信号になるとすぐDレンジへ戻す操作を繰り返すほうが、変速機内部のクラッチなどを作動させる回数が増える。
ただし、だからといって「Nレンジに入れるとATが壊れる」というのも言いすぎだ。Nレンジは本来備わっている機能であり、適切に使用すること自体が故障の原因になるわけではない。
注意したいのは、NレンジからDレンジへ戻した直後の操作である。Dレンジに入れた瞬間にアクセルを踏み込むと、駆動力が伝わる際にショックが発生することがある。
とくにAT内部のクラッチが完全につながる前にエンジン回転数を上げるような操作は避けたい。Dレンジへ切り替えたら、駆動力が伝わる状態になったことを確認してから穏やかに発進するのが基本だ。
また、Nレンジに入れたからといって、ブレーキから足を離してよいわけではない。わずかな勾配でもクルマが動き出す危険があるため、停止中はフットブレーキで確実に保持する必要がある。
最近のAT車には、停止中のエンジン負荷を軽減するニュートラル制御や、ブレーキホールド機能を備えたモデルもある。ハイブリッド車やCVT車、DCT車などでは制御方法も異なるため、一律にDとNのどちらが機械的に有利とはいえない。
結論として、通常の短い信号待ちならDレンジのままブレーキを踏んで停止すれば問題ない。長時間停止する場合の操作については、車種ごとの取扱説明書に従うのが正解だ。
下り坂でフェード現象を防ぐためブレーキを弱く踏み続けるのは逆効果!
山道や長い下り坂を走っている時、スピードが出すぎないようにブレーキを軽く踏み続けている人はいないだろうか。
急ブレーキをかけるよりも、弱いブレーキをかけ続けたほうがクルマに優しい。そんなイメージを持っているドライバーも少なくないはずだ。
ところが、長い下り坂でブレーキを弱く踏み続ける行為は、かえってブレーキを過熱させる原因になる。
ブレーキは、ディスクローターとブレーキパッドなどの摩擦によって運動エネルギーを熱に変え、クルマを減速させる仕組みだ。
当然ながらブレーキを使えば熱が発生する。軽く踏んでいても長時間使い続ければ熱が蓄積し、ブレーキの温度が上昇してしまう。
この熱が限界を超えると発生するのがフェード現象である。
フェード現象とは、ブレーキパッドなどの摩擦材が高温になり、摩擦係数が低下することで制動力が落ちる現象だ。ブレーキペダルを踏んでも思うように減速できなくなるため、非常に危険である。
さらに注意したいのが、ベーパーロック現象だ。
ブレーキの熱がブレーキフルードに伝わり、フルードが沸騰して気泡が発生すると、ブレーキペダルを踏んでも油圧が十分に伝わらなくなる。これがベーパーロック現象である。
フェード現象とベーパーロック現象は原因も仕組みも異なるが、どちらもブレーキの効きが悪くなる重大なトラブルだ。
では、長い下り坂ではどうすればいいのか?
答えはエンジンブレーキを積極的に活用することだ。AT車ならDレンジのまま走るだけでなく、必要に応じてSレンジやBレンジ、あるいはマニュアルモードで低いギアを選択する。
こうすることでエンジンブレーキによる減速力を強め、フットブレーキへの負担を軽減できる。
ハイブリッド車では回生ブレーキも減速に役立つが、駆動用バッテリーの充電状態によって回生量が制限されることもある。車種によってはエンジンを回して減速力を確保する制御も行われる。
重要なのは、フットブレーキだけに頼らないこと。必要な時にはしっかり減速し、ブレーキを使わない時間を確保することで、過度な温度上昇を防ぎたい。
もちろん、ブレーキを使わないこと自体が目的ではない。エンジンブレーキを活用しながら、安全な速度を維持することが最優先である。
もし下り坂でブレーキの効きに異常を感じたら、無理に走行を続けず、安全な場所に停止して点検を受けるべきだ。



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