トヨタは2030年までに世界で販売する約50車種1000万台に次世代車載ソフトウェア開発基盤「Arene(アリーン)」を搭載すると発表したが、重要なのはアリーンによって「SoCフリー化」が可能になること。自動車メーカーと半導体メーカーの間大きな壁を取り払い、お互いの開発が自由になる。さらにその先には工場やロボットまでを巻き込む壮大な構想があるというからビックリだ!
文:ベストカーWeb編集部/写真:トヨタ、ウーブンバイトヨタ
【画像ギャラリー】クルマ界の常識を変える!? RAV4やESに採用されたアリーンってなんだ!?(7枚)画像ギャラリークルマは6年、半導体は短期間で進化! このズレが大問題だった
いま、自動車業界では大きな変革が起きている。SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)、つまりソフトウェアによって機能や価値が進化するクルマへの転換だ。ところが、そこには意外な落とし穴があった。自動車の開発サイクルと半導体の進化するスピードがまったく違うという問題である。
一般的にクルマのモデルサイクルは4〜6年程度。
一方、クルマの頭脳に当たるSoC(システム・オン・チップ=1枚のチップに集積した半導体)は、はるかに短いサイクルで進化する。処理能力が高まり、新しい機能が搭載され、次々と新世代の製品が登場する。
半導体メーカーとしては、新しいSoCをどんどん採用してもらいたい。しかし自動車メーカーにとっては、これが簡単ではない。新しい半導体を採用するたびに、ソフトウェアとの適合、動作確認、性能評価など膨大な作業が必要になるからだ。しかもSoCの内部構造はブラックボックス化されている部分が多く、自動車メーカーが自由に手を加えられるわけではない。
結果として、最新の半導体を使いたくても使えない。半導体メーカーは新製品を投入したいのに、自動車メーカーは対応する余裕がない。これが現場の大きな悩みとなっている。
このまま半導体の進化が加速すれば、車種ごと、SoCごとに適合作業を繰り返す従来の方法では、開発リソースが限界に達する恐れもある。
そこでトヨタが打ち出そうとしているのが「SoCフリー」という考え方なのだ。
トヨタの切り札「Arene(アリーン)」が半導体の違いを吸収する!
では、SoCフリーとは何なのか? 簡単にいえば、どのメーカーの半導体を採用しても、その違いにソフトウェア開発が大きく左右されないようにする仕組みだ。
トヨタの構想では、アリーンをアプリケーションと半導体の間に位置するミドルレイヤーとして活用しようというのだ。
これまでの開発では、半導体を変更すると、それに合わせてソフトウェア側にも大規模な修正が必要になるケースがあった。しかし、AreneがSoCの違いを吸収できれば、上位のアプリケーションを大きく変更せずに、新しい半導体へ移行できる可能性が広がる。
例えば、あるクルマに搭載するSoCを次世代品へ変更したとしよう。従来は、そのSoCに対応するための調整や検証が必要だった。ところが共通のミドルレイヤーで違いを吸収できれば、適合作業の多くを再利用できるようになる。実現すれば自動車メーカーは半導体の細かな違いへの対応よりも、自社独自の機能開発に集中できる。
半導体メーカーにとっても、新しい製品を採用してもらう際の障壁が低くなる。
つまり、双方にメリットがあるというわけだ。
もちろん、実際にはSoCの性能や安全要件などによる制約があるため、あらゆる半導体が無条件で使えるという話ではない。それでも、従来の車種別・半導体別の「合わせ込み」を大幅に削減できれば、クルマづくりの自由度は飛躍的に高まるはずだ。










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