フェラーリの顧客囲い込み戦略
ちなみに、フェラーリの市販車プログラムとしては、ワンオフの下にほとんどワンオフというべき「フォーリ・セリエ」(10台くらいの限定オーダーモデルで内外装も特別デザイン)、スペシャルオーダーの「テーラーメード」(シリーズモデルがベース)、セミオーダーの「アトリエ」といったプログラムが用意されている。
さらに限定生産の「スペチアーレ」や「アイコナ」もあって、そのうえレギュラーシリーズの「GT」(ローマやポルトフィーノなど)や「スポーツ」(F8や812など)、今後はSUVもあるわけだから、フラヴィオ率いるフェラーリのインハウスデザインチームはさぞかし大忙しなことだろう。
そしてこれは、他のすべての高級ブランドが追随する(したい)顧客囲い込み戦略でもあった。
フェラーリの囲い込み戦略にはもうひとつ、F1クリエンテやFXXプログラムといったお得意のレーシング系もあって、そちらのほうが実はマラネッロにとっては“重い”わけだが、今回はこれ以上、触れない。
とにかく市販プログラムの中での頂点がマラネッロにワンオフモデルをオーダーできること、だと理解してもらえればいい。
オモロガータは最新のワンオフモデル
そんなワンオフプログラムの最新モデルが、9月に発表された「オモロガータ」である。
その名の由来はかのGTOのO、つまりはホモロゲーションを意味する。往年のホモロゲーションモデルのデザインを現代的に再構築し、ベースとなった812スーパーファストに併せて実現した。
ボディパネルはハンドクラフトのアルミニウム製である。ロードカーゆえレギュレーション変更を回避するためにフロントスクリーンとヘッドライトは変更されていない。これもまたワンオフモデルの特徴だ。
エクステリアよりもインテリアに往年のサンデーレーシングカーの雰囲気が色濃く漂っている。
ダッシュボードやステアリングホイールには結晶塗装風に、インナードアハンドルやF1ブリッジにはハンマー塗装が施された。いずれも1950、1960年代の250系レーシングモデルに特徴的なペイントだ。
今回のワンオフモデルは、どちらかというとテーマ重視なのだろう。
オーナーはおそらく、250GTOあたりで実際にサーキットを攻めるようなアグレッシブな人物ではないか。それゆえエクステリアはさほど派手では なく、それよりもブルーのシート生地や結晶塗装風などに拘った。
近い将来、どこかのサーキットで走る勇姿を見ることができるかも知れない。
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