コロナ禍で自動車株は値上がりしたのか? 自動車メーカーの今の経営状況を徹底分析!

スズキ、スバル、マツダ、三菱の2020年度決算概要と今後の見通し

 次にスズキ、スバル、マツダ、三菱の詳細を見ていこう。

スズキはインドの状況が不透明なことから収益予想を開示せず、スバル、マツダ、三菱の各社は2021年度に黒字転換を予想(出典;各社決算発表資料、各種公表資料より筆者作成、販売台数は四輪車)
スズキはインドの状況が不透明なことから収益予想を開示せず、スバル、マツダ、三菱の各社は2021年度に黒字転換を予想(出典;各社決算発表資料、各種公表資料より筆者作成、販売台数は四輪車)
一時スズキ株は日経平均をアウトパフォームしたが失速、マツダは比較的健闘(出典;各種公表資料より筆者作成)
一時スズキ株は日経平均をアウトパフォームしたが失速、マツダは比較的健闘(出典;各種公表資料より筆者作成)


■スズキ/インドの影響が極めて大きい

鈴木修氏は2021年6月をもってスズキの会長職を退き、相談役に就任する。40年以上にわたり経営の最前線に立ち続けてきた
鈴木修氏は2021年6月をもってスズキの会長職を退き、相談役に就任する。40年以上にわたり経営の最前線に立ち続けてきた

 2020年度の販売台数が10%近く減る中で営業利益は約200億円の減益(3期連続)となったが保有していた有価証券の売却益や為替差益などで最終増益を確保。インドの感染拡大状況が予断を許さないことにより2021年度の収益予想は非開示となった。

 株価は昨年末ごろまで他の自動車会社を大きくアウトパフォームし一時は5780円をつけたが現在は4250円程度まで下げてきている。販売台数は日本のほぼ倍、シェアも5割を占めるインドでの売上が急速に回復し他社対比割高に取引されていたところ、3月末から新型コロナウイルス感染が急速に拡大し現地自動車生産を中止すると発表したことがきっかけ。

 ただしインドでは運転教習所、保険、販売金融、修理までを含む確固としたエコシステムを構築し顧客ロイヤリティが非常に高い上に今後も大幅な人口増加が見込まれること、コロナ下での行動変革と交通インフラが限定的な新興国での需要増加により小型車への需要増加が見込まれる中で小型車へ特化している優位性などから悪材料が一巡すれば株価も復活を遂げる可能性も。


■スバル/苦戦が続く

スバルの個性を大切にすると宣言するスバル代表取締役社長の中村知美氏
スバルの個性を大切にすると宣言するスバル代表取締役社長の中村知美氏

 営業利益が2016年度の4108億円から2019年度には2103億円と4年でほぼ半減、そして翌年度の2020年度にさらに半減の1025億円と、本業の儲けは5年で4分の1に縮小。純利益も同様となるなど苦戦が続く。

 水平対向エンジン、4WDとコアなファン層への訴求で存在感を示してきたがカリフォルニア州で2035年までにガソリン車販売が禁止になることなど主力市場である北米での環境規制の厳格化など逆風が吹く。

 SUVの人気が高い中国でも2035年に新車販売のすべてを環境対応車にする方向と伝えられており、スバルのリスク要因として指摘される北米への依存度の高さを方向転換するには電動化に舵を切る必要がある。

 しかし、それは水平対向エンジンというレガシーを諦めることにもつながりイノベーションのジレンマ、すなわち現在保有する優れた技術が将来の足かせとなってしまう状況にある。

 会社の規模が小さく巨額の投資が必要な電動化に後れを取っていると見られてきたこと、144円だった年間配当が昨年度100円に、今年度予想で56円になること、コロナによるサプライチェーンの混乱、半導体不足の影響が相対的に大きいことなども嫌気され、リコール問題の影響が薄れ米国でのコロナ感染拡大にメドがつき始めたなかでも株価は軟調な展開が続く。一時は3000円近かった株価も2000円程度に低迷、反転の兆しが見えづらい。

■マツダ/規模の小さい自動車会社のなかで健闘中

2018年6月にマツダ代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)に就任した丸本明氏
2018年6月にマツダ代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)に就任した丸本明氏

 2020年度は販売台数9.3%減、売上高16%減と厳しい数字となり、営業利益率0.3%すなわちクルマを売ってもほとんど儲からない水準までボリュームが減少し317億円の赤字へ転落。

 ただ米国工場新設の関連費用など前向きな費用がかさんだ影響もあった。今年度はコストカット努力の継続など損益分岐台数の引下げを図り売上高の伸びを大きく上回る営業増益を目指す。

 最重要市場である米国で市場が9%減となるなかで前年度対比7%の販売台数増、シェアも0.3%増えて2%に。米国新工場を稼働させるなど輸出比率引下げとサプライチェーン効率化、現地化による米国消費者向けブランド価値創出などを行う。

 今後さらに注力していく中国市場ではシェアは0.8%と0.1%落としたものの今後セダンからSUVへと需要のシフトが予想されるなかで競争力となるEVもすでにMX-30 EVも市場投入済み。

 徹底したコスト削減に加え、このあたりも規模の小さい自動車会社の生き残り競争が厳しい中で株式投資家からは評価されるポイント。

 コロナ前の1000円を超える株価が2020年には500円台前半まで売り込まれるところもあったが直近は800円台半ばまで回復。コロナ前からの下落率は4.2%と時価総額の少ない自動車会社のなかでは比較的健闘。輸出比率が高いため今後の為替水準次第で円安ドル高・ユーロ高メリットも。


■三菱/極めて苦しい状況から脱却を図る

2020年8月に就任した加藤 隆雄CEO 、そして長岡 宏Co-COO兼 開発担当という三菱自動車のトップの二人。明らかにされたラリーアートの復活に期待したい
2020年8月に就任した加藤 隆雄CEO 、そして長岡 宏Co-COO兼 開発担当という三菱自動車のトップの二人。明らかにされたラリーアートの復活に期待したい

 2020年の販売台数は29%減、他社が一部市場で販売増となるところもあった中ですべての市場で販売台数を大きく減らした。

 売上高は36%減少し営業利益は953億円の赤字、他社で回復が見られた2021年1-3月期に前年同期・前四半期対比赤字幅が拡大するなど厳しい内容。営業外損失、特別損失もリストラ関連費用などにより2100億円を超え、為替差益37億円と雇用調整助成金の60億円がなければもっと大きな赤字となっていた。

 自己資本比率も3割を切り危険水域に。フリーキャッシュフローもマイナス1788億円と前向き投資に使える原資も失われている。

 本来なら2009年に世界初の量産型EV、i-MiEVを発売し、また2013年に世界初のPHEVのSUVであるアウトランダーPHEVを発売したEVのパイオニアであるべき三菱がこのような苦境にあえぐようになったのは残念で仕方ない。

 欧州32ヵ国中15ヵ国からの新車販売事業撤退、希望退職者募集などで2年間で固定費の2割削減する計画を1年前倒しで達成したことは好材料。

 2020年11月にはコロナ前の4割ほどとなる188円まで下落した株価も直近303円まで戻したが、コロナ前と比較して7割の水準にとどまる。

 主力のASEAN市場、特にマレーシアやベトナム、オーストラリアやニュージーランドで新型アウトランダー、エクリプスクロスPHEV、エクスパンダーなどの商品刷新戦略が奏功すれば好転なるか。

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